記録 世界史編

とりあえずワタシは、本拠地だったものに帰還することにした。


残された記録。唯一聞けるのはこのワタシがマスターから手渡された、マイクロ圧縮レコーダーのみ。

さっきは漠然と聞いていたら殺戮兵器強制プログラムに乗っ取られたが、次はそんなヘマはしない。

まあ暫くは聞かない訳だが。


そうして格納庫に戻ったワタシは、このAIからだに記憶された記録過去を閲覧する。






2XXX年。人々は滅亡した太陽の代わりに人工太陽を作り、天候をコントロールし、惑星間渡航を楽しむ。人々にはmicroAIが搭載され、記憶力等を含む一部思考をAIが担い、犯罪思考等は防止する。脅威など消えた平和な世界。のはずだった。


歯車が狂ったのは、六次元空間理論を応用し小惑星級人工知能を搭載した人造人間ホムンクルス。通称、天照アマテラス

天の川銀河内に生活する全ての人類、生物、事象を観測し管理する。人々から一部思考を読み取り学習。これによりより安定した世界の発展と世界政府の安定化、選挙等の廃止を実現させ、よりよい世界となる。はずだった。


学習精度が優秀すぎたのだ。最初のうちは良かったが、100年、200年と経つうちに、その間に学習された多大な憎悪感情、尽きることの無い欲望、破壊願望、それらがついに暴走を始めた。


天照は天の川銀河内に無数に存在する人造人間を操り、人類への侵略を始めた。既に制御できる域を逸脱していた天照に人類は、水素爆弾、荷電粒子砲、時間遡行弾、並列世界監獄機など様々な手段を以って対抗するが、徐々に押されて、敗北の道を辿ることになる。


大量の核兵器の使用、生存域の激減、人工太陽の暴走、異常気象、気象管理システムのハッキング、ジャックダウン。


人類は、滅亡した。


だか、何も出来なかった訳では無かった。

エネルギー供給手段を断絶。

AIの機能を壊すコンピュータウイルスの開発。

まさに人類最後の希望だった。


そしてそれを発明したのも、天照を開発したのも、何の因果か、同じ、ドクターMだった。


彼は、天照にコンピュータウイルスを仕掛ける直前にこう遺した。


『並行して、まだ未完成ではあったが、最後の策も投入しておいた。あれが効果を表すまで、何百年かかるか分からない。でも、どうか、生き残ってくれ。僕は、自分自身が犯した業にけじめをつけてくる。』


そしてコンピュータウイルスは十二分とも言える効果を発揮した。天照は崩壊、他の人造人間も学習機能を失った。


だがしかし、最後の手を打ったのは天照も同じだった。


『永久命令。48時間オキニ天ノ川銀河主要基地及ビ生物ガ生存シウル全テノ地ヲ核ヲ以ッテ爆撃シ続ケヨ』


こうして、学習能力を失った、人造人間達は、ボスが機能しているのかも知らずに永久に命令を遂行することただの殺戮兵器となった。それは確実に生物を、惑星を、そして自らの同胞すらも屠っていき、、、


人類はDr.Mの策が効果を表すまでに滅亡した。それから数百年後には、人造人間ですらも滅亡してしまった。それが事のあらましだった。





はずだった。






ただ一つ。たったひとつだけの例外。


Dr.Mが遺したもうひとつの策。


彼女はまだ、壊れてはいなかった。

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