エピローグ 魔法の稽古とリーナの見守り

魔物討伐を無事に終えた後も、ユウマは休むことなく魔法の稽古を続けていた。彼は剣の技術だけでなく、魔法の腕前も磨くことに情熱を注いでいた。何度も失敗を重ねながらも、彼は決して諦めない。それが彼の強さでもあり、私にとって誇りだった。


「リーナ先輩、今日こそ魔法を完璧に決めてみせますよ!」


ユウマは自信たっぷりに手のひらに魔力を集め始めた。その姿を見守りながら、私は少し微笑みを浮かべていた。これが初めての魔法の稽古ではなく、彼はこれまで何度も挑戦してきた。だけど、毎回何かしらのハプニングが起きるのが常だった。


「うん、ユウマ。ちゃんと集中してね。焦らずに、無理しないで。」


彼の成長を見守りながらも、私はやはり少しだけ心配だった。ユウマは常に全力で挑むけれど、その分、時には無茶をしてしまう。とはいえ、今回はできる限り手を出さず、彼が自分で乗り越える瞬間を待とうと決めていた。


その時、遠くから竜兄弟がこちらを見下ろしていた。彼らはいつも私たちの稽古を見守り、時には呆れた表情を浮かべながらも、黙ってユウマの成長を見守っている。


「兄者、ユウマがまた魔法の訓練だよ。今日こそ成功するかな?」


リグルが少し笑いながら言うと、ザグルはゆっくりと頷いた。


「弟者よ、リーナは今日もあの様子だな。いつも彼を見守りながら、何かあればすぐに飛び込むつもりでいるだろう。」


彼らの言葉が聞こえる。確かに、私はユウマを心配するあまり、いつも彼のそばで見守っている。それは自覚しているけれど、それでも彼が無事であることが最優先だ。


ユウマはその間も、手のひらに魔力を集中させていた。周囲の空気が少しずつ変わり、魔力の輝きが彼の手の中で大きく膨らんでいく。その姿に、私は一瞬ハラハラしながらも、静かに見守ることに徹した。


「よし、今回はいける!」


ユウマの声が緊張感を破り、彼は呪文を唱えながら一気に魔法を放とうとした。しかし、その瞬間――。


「ドカーン!!」


またしても大爆発が起こった。いつものごとく、辺りに砂煙が立ち込め、私の心臓が一瞬凍りつく。何度も見てきた光景だけれど、その度にやはり心配は拭えない。


「ユウマ!!」


私は反射的に叫び、すぐに砂煙の中へ駆け寄った。ユウマが無事であることを確認するために、全身の力を込めて走った。砂煙が少しずつ晴れていき、そこに現れたのは――やはりまたしても焦げた服を着たユウマの姿だった。


「またやっちゃいましたね…でも、大丈夫ですよ、先輩!僕、全然平気です!」


彼は少し照れくさそうに笑いながら頭を掻いていた。私の胸の中で一瞬ホッとしたが、やはり念入りに彼の体を確認せずにはいられなかった。


「ユウマ、本当に大丈夫?どこも痛くない?怪我してないわよね?」


私は彼の服や体を注意深く見つめ、無事であることを再三確認した。ユウマは苦笑いしながらも、「本当に大丈夫です、先輩」と言い続けているが、私は彼の安全を確信しない限り、安心することはできなかった。


その様子を見守っていた竜兄弟は、呆れたようにため息をついた。


「兄者、またリーナがユウマにべったりだね。彼、本当に大変そうだな。」


リグルが少し笑いながら言い、ザグルもゆっくりと頷いた。


「弟者よ、リーナは常にユウマを気にかけている。だが、彼女のその姿がある限り、ユウマもまた強くなっていくだろう。そう信じているよ。」


私は竜たちの言葉を聞きながらも、ユウマに向き合い続けた。彼は再び立ち上がり、真剣な表情で私に向かって言った。


「次こそ、もっと慎重にやります!絶対に成功させますから!」


その言葉を聞いて、私はようやく微笑みを浮かべ、彼の決意を感じ取った。


「うん、分かったわ。焦らずにね、ユウマ。次こそはきっと大丈夫よ。」


ユウマは再び自信を取り戻し、次の魔法の稽古に向けて歩き出した。その姿を見守りながら、私は心の中で彼の成長を確信した。失敗を繰り返しながらも、彼は着実に前進している――それを感じるたび、私は少しずつ安心できるようになってきていた。


こうして、私たちはまた新たな挑戦へと向かっていく。ユウマの成長を見守りながら、私はこれからも彼を支え続けることを決めていた。   


                                  おしまい

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リーナ先輩と竜騎士ユウマの日々 @anichi-impact

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