第3章 第1話 初めての魔物討伐
ユウマ、私、そして竜兄弟の4人で初めての本格的な魔物討伐に向かっていた。訓練とは違い、実際に命をかけて戦う現場だ。相手は雑魚魔物とはいえ、何が起こるか分からない実戦に私は不安でいっぱいだった。特に、ユウマが無理をしないかどうかが気がかりだった。
「リーナ先輩!今日は僕が魔物を倒して見せますよ!任せてください!」
ユウマはいつもの笑顔を見せながら、自信満々に剣を握りしめていた。その笑顔を見ると、私の心配が少し和らぐのだけれど、それでも実戦は別物。訓練とは違い、失敗が許されない現場だ。
「ユウマ、今日は本物の魔物相手よ。くれぐれも無茶はしないで、慎重にね。」
私は自分でも過保護だと分かっているけれど、やはり彼の安全を優先してしまう。彼はすっかり成長していると分かっていても、まだ不安が拭えなかった。
「先輩、僕もう大丈夫ですよ!訓練通りにやれば問題ないです!」
ユウマはやる気満々で、そんな私の心配を気にしている様子もない。その明るさに少し安心しつつも、私は自分に「彼を信じよう」と言い聞かせた。
私たちは森に足を踏み入れ、魔物の気配を感じながら前進していった。森は静かで不気味な雰囲気が漂っており、風に揺れる木の葉の音が、緊張感をさらに高めていた。
「兄者、リーナがまた心配しすぎてるよ。」
リグルが小声で呆れたように言うと、ザグルが冷静に答えた。
「弟者よ、リーナはユウマを大切に思っている。だが、その過保護が彼の成長を妨げていることに、彼女も気づくべきかもしれん。」
二匹の竜のやり取りに、私は耳を傾けながらも、ユウマの方をじっと見つめていた。そんな時――前方の木々の間から、ついに魔物が姿を現した。
その魔物は牙と爪を持つ小型の獣のような姿で、まるで狩りの獲物を見つけたかのように、私たちに向かってゆっくりと近づいてきた。
「来たぞ、ユウマ!」
私は警戒を促しながらも、心の中で緊張が高まっていくのを感じた。ユウマは剣を握りしめ、真剣な表情で魔物に向かって前に出た。
「今度こそ僕がやります!」
ユウマは一気に距離を詰め、剣を振り下ろした。しかし、魔物は素早く身をかわし、ユウマの攻撃を避けた。それどころか、逆に牙をむき出しにしてユウマに向かって飛びかかろうとする。
「ユウマ、危ない!」
私は叫んだが、その瞬間、無意識に手を出してしまった。体が反射的に動いてしまったのだ。次の瞬間、私の手から魔法が放たれ、魔物は光の弾に吹き飛ばされ、地面に転がった。
「え…あれ?」
ユウマは驚いた顔で魔物を見つめ、そして次の瞬間、自分がそれを倒したと勘違いした。
「やった!僕が倒しましたよ!」
彼は嬉しそうに振り返り、私に誇らしげな笑顔を向けた。その瞬間、私は「あ、やっちゃった…」と気づいたが、彼の喜びを壊すことはできなかった。
「ユウマ、すごいじゃない!君の力で倒したのね!」
私は微笑みながら彼を褒めることにした。ユウマはますます自信満々で「先輩、僕、成長してますよね!」と嬉しそうに言った。その無邪気さに、私は少しだけほっとしたが、内心ではまた無意識に手を出してしまったことに反省していた。
その様子を見ていた竜兄弟は、いつものようにため息をついていた。
「兄者、またリーナが手を出しちゃったね。」
リグルが呆れたように言うと、ザグルが少し苦笑しながら答えた。
「弟者よ、これはもう日常茶飯事だ。ユウマがこれで満足しているなら、それでいいかもしれんがな。」
二匹の竜は、私たちのやり取りを見守りながら、再び呆れた表情を浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます