第2章 第4話 リーナの過保護モードと竜たちの相談
ユウマが新しい魔法で大爆発を起こしたあの日から、私はますます彼のことが心配で仕方がなくなっていた。彼は成長しているのは確かだけど、その勢いが危険な方向に進んでいるような気がしてならない。彼が無理をして怪我をしたら…そう思うたびに、私は過保護モード全開になってしまう。
「ユウマ、今日は少し魔法の練習を控えめにしようか?」
訓練場で、私はできるだけさりげなく彼に提案した。でも、ユウマは私の心配を全く気にしていない様子で、いつも通りの明るい笑顔を浮かべて答えた。
「大丈夫ですよ、先輩!僕、もう少しで魔法を完全にコントロールできそうな気がします!」
彼のその自信に満ちた言葉に、私はまたしても言葉を詰まらせた。ユウマが成長していることは間違いない。彼の意志も強く、頑張り屋だ。でも、その勢いが危険だと感じてしまうのは、私が過保護だからだろうか?
「そう…でも、無理だけはしないでね。」
私は再び念を押すように言った。ユウマが怪我をしないことが、私にとって最も重要だ。彼が笑顔で元気に訓練を続けられるように、私はできる限り彼を守りたい。それが先輩としての私の役目だと思っている。
訓練が進む中、ユウマは新しい魔法の練習にも熱心に取り組んでいる。しかし、そのたびに私は内心ヒヤヒヤしながら、彼を見守っていた。そんな私の様子を見かねたのか、竜兄弟が近づいてきた。
「リーナ、ちょっと話がある。」
ザグルが私に声をかけた。彼の表情は少し真剣で、普段の呆れた様子とは違っていた。リグルも後ろで頷いている。私は彼らの様子に少し驚きながら、話を聞くことにした。
「何か問題でもあるの?」
私が問いかけると、ザグルは少し間を置いてから口を開いた。
「ユウマのことだが…お前が過保護すぎて、彼の成長を妨げているのではないかと心配している。」
「過保護…?」
私は驚いて、言葉を失った。彼の成長を見守りつつも、怪我をしないように守っているだけのつもりだった。でも、竜たちはそれを問題だと感じているらしい。
「リーナ、君が彼を守る気持ちはわかるけど、ユウマが自分で乗り越えるべき試練を君がすべて解決してしまったら、彼は本当に強くなれるのか?」
リグルが優しく補足してくれたが、その言葉が胸に突き刺さった。確かに、私が飛び込んで彼を守ることで、彼の成長の機会を奪ってしまっているかもしれない。
「でも、彼が危険な目に遭うのは見ていられないの!」
私は半ば反射的に答えた。ユウマが怪我をするのをただ見ていることなんてできない。それがどれだけ彼のためにならないとしても、私の本能が彼を守ろうとしてしまう。
「リーナがユウマのことをすごく大切に思っているのはわかるよ。だからこそ、その気持ちが彼の成長を阻害することがあるんだ。」
リグルが少し柔らかい口調で言うと、ザグルが真剣な表情で頷いた。
「リーナ、お前が彼を守り続ければ、彼はいつまでも自分の力を信じられないかもしれん。それに、いつか本当に大きな試練が来たとき、彼が立ち向かう力を失ってしまうかもしれない。」
その言葉に、私は深く考え込んだ。ユウマを守りたい気持ちと、彼を強く育てたい気持ちがぶつかり合っている。竜たちの言うことは正しい。私が彼にすべての答えを与えてしまえば、彼が自分で成長する機会を失ってしまうかもしれない。
「わかったわ。これからは、もっと彼に自分で挑戦させるようにする。でも、本当に危ないときは絶対に助けるから!」
私は決意を固め、竜たちに答えた。ユウマを見守りつつ、彼が自分で成長できるようにする。それが私の新しい役目だ。
「それでいい、リーナよ。私たちもユウマのことを見守っていくが、彼の成長を信じてやってくれ。」
ザグルが静かに言い、リグルも笑顔で頷いた。
「ユウマはきっともっと強くなるよ、リーナ。それを楽しみにしよう。」
彼らの言葉に、私は少し安心し、ユウマの成長を信じて見守ろうと心に決めた。しかし、その時――。
「ドカーン!!!」
突然、再び大きな爆発音が訓練場に響き渡った。砂煙が辺りを覆い、私は一瞬固まってしまった。
「ユウマ!」
叫びながら、私は反射的に砂煙の中へ駆け込んだ。心配が爆発し、過保護モード全開でユウマの姿を探す。
砂煙が少し晴れた時、そこに立っていたのは――無傷のユウマ。しかし、彼の服はまたしても焦げ付き、髪は逆立っている。
ユウマは少し焦った表情を浮かべながら、呟いた。
「あれ?またやっちゃいましたかね…?」
私は胸がドキドキし、無事だった彼に安堵しながらも、心配のあまり彼に駆け寄って抱きしめた。
「ユウマ、大丈夫!?本当に怪我してない!?」
必死に確認しながら彼の体をチェックする私を見て、竜兄弟は呆れたようにため息をついた。
「兄者、まただよ。」
「弟者よ、これはもう日常の一部だと諦めるしかないな…」
二匹の竜は、私とユウマのやり取りを見守りながら、いつものように呆れた表情を浮かべていた。
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