第2章 第3話 ユウマの新たな挑戦と不安

ユウマが模擬戦で一本取ったあの日以来、彼はますます自信をつけ、訓練場での訓練にさらに積極的になっていた。そして今日は、ついに新しい魔法に挑戦すると宣言してきた。


「リーナ先輩、今日は新しい魔法を試してみます!」


彼の自信に満ちた言葉に、私の胸はざわつき始めた。まだ彼の魔法のコントロールは完全ではない。最近の訓練でも、いくつか危なっかしい場面があった。それでも、ユウマは以前の「成功」に自信を持っているらしく、今日の挑戦も失敗するとは思っていないようだった。


「魔法…?ユウマ、まだ少し早いんじゃない?」


私は不安を隠せず、慎重に声をかけた。彼が自信を持つのはいいことだけど、もしも失敗して大きな怪我でもしたら――そんな不安が頭をよぎる。しかし、ユウマはそんな私の心配を軽く流すように笑顔を返してきた。


「大丈夫ですよ、先輩!僕、最近調子がいいんで!」


そう言い切る彼に、私はもう何も言い返せなかった。ユウマの意志が固いことはわかっている。彼に挑戦の機会を与えるべきなのか、それとも制止すべきなのか、私は葛藤したが、結局、彼を信じることにした。


「…わかったわ。でも、無理しないで慎重にね。」


私の言葉に、ユウマは力強く頷き、訓練場の中央に立った。彼が手をかざし、集中し始めると、空気がピリピリと張り詰めてきた。その場の雰囲気が一気に変わり、私の心臓が早鐘のように打ち始めた。ユウマは本当に大丈夫だろうか…。


彼の手の中で、魔力が集まり、少しずつ光を放ち始めた。それは以前の訓練では見たことのない大きさだった。私は息を飲み、彼の動きをじっと見守る。


そして――。


「ドカーン!!」


突如として大きな爆発音が訓練場全体に響き渡り、砂煙が一気に舞い上がった。辺りは一瞬で視界が塞がれ、私はユウマがどこにいるのかも見失ってしまった。


「ユウマ!?」


焦りの声をあげながら、私は砂煙の中をかき分け、必死に彼を探した。心臓がバクバクと鳴り響き、頭の中では最悪のシナリオが次々と浮かんでくる。どうか無事でいて――。


砂煙が少しずつ晴れると、ようやく彼の姿が見え始めた。そこには――無事で立っているユウマがいた。いや、完全に無傷ではないけれど、彼は立っている。彼の服は所々焦げていて、髪も逆立っていたが、それでも元気そうだった。


「ユウマ、大丈夫!?怪我してないの!?」


私は急いで彼のもとに駆け寄り、全身を確認した。ユウマは驚いたような表情を浮かべていたが、次の瞬間、満足げに笑みを浮かべた。


「先輩、見ましたか?僕、すごい魔法を使えました!」


彼の目は輝いていた。私はその言葉を聞いてホッとする反面、何かが引っかかっていた。確かに彼は魔法を成功させたのかもしれない。でも、あの爆発は偶然の産物であって、彼が完全にコントロールできたとは言い難い。


「う、うん…でも、ちょっと危なかったわね。もっと制御を練習しないと…」


その時、遠くから竜兄弟が歩いてきて、私たちのやり取りを見守っていた。


「兄者、これは…ユウマ、すごい力を持ってるんじゃないか?」


リグルが興奮した口調で言うと、ザグルも少し考え込むように頷いた。


「確かに、あの爆発の規模を見る限り、彼には相当な潜在能力があるかもしれん。あれを完全に制御できるようになれば…」


竜たちは口々にユウマの才能を評価しているが、私は不安で仕方がなかった。確かに彼の力は大きい。でも、それをどう扱うかが問題だ。彼が制御できない力を持つことが、どれほど危険なのか、私は痛感していた。


「でも…でも、あんなに危険なことを続けるのはどうなの?」


私は竜たちに向かって反論するように言った。彼らは私の言葉を聞いて、少し微笑みを浮かべた。


「リーナよ、ユウマはまだ未熟だ。しかし、これを乗り越えれば彼はさらに強くなれるだろう。」


ザグルが冷静にそう言うが、私はまだ不安が拭えない。彼が本当に強くなるためには、何度も試練を乗り越えなければならない。それが彼にとって正しい道なのか、私は答えを出せずにいた。


「…そうね。でも、彼を守るのは私の役目だから…危ないことはさせたくないわ。」


私は彼の背中を見つめながら、彼を守る責任を強く感じた。ユウマの笑顔は、私にとって最も大切なものだから。

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