第2章 第2話 ユウマの自信とリーナの焦り
ユウマが自分の力だと勘違いした攻撃魔法事件から数日が経った。ユウマはあの日の「成功」をすっかり自信に変え、訓練場でますます意気揚々と動き回っている。もちろん、私はその背後でひそかに焦っていた。だって、あの魔法はユウマの力じゃなくて、私が無意識にやっちゃったことだもの。
「リーナ先輩!今日もまた模擬戦お願いします!」
ユウマは木剣を構えながら、やる気満々で私に声をかけてきた。彼の成長を見守りたいとは思っているけど、あの時のようにまた何か起こったら…そんな不安が消えない。
「ええ、いいわよ。でも無理はしないでね。」
私は笑顔を作りながらも、胸の奥ではドキドキが止まらない。彼が本当に自分の力で成長していると思っていることは嬉しいけれど、次にまたピンチが来たら、私が手を出さずに見守ることができるのかどうか、正直自信がない。
訓練場でユウマは再び敵役の騎士と向かい合った。その瞬間、敵役の騎士は一瞬ビクリとし、私をちらりと見た。明らかにあの日の出来事を思い出している様子だ。彼は、少し震えた声でつぶやいた。
「また俺なのか…?リーナ先輩が見てると怖いんだよな…」
その言葉を聞いて、私は苦笑い。確かにあの日、彼を無意識にボコボコにしてしまったことを思い出すと、彼が怯えるのも無理はない。敵役は私を警戒しながらも、模擬戦を始めた。
「さあ、来い!」
ユウマの声が響く。敵役の騎士が軽く笑いながら剣を構え、再び模擬戦が始まった。私は少し離れた場所から見守っていたけれど、内心はまだざわついていた。あの魔法が彼に勘違いさせたことで、彼が過信して無茶をしてしまうのではないか…そんな不安がぬぐえない。
「ユウマ、慎重にね!焦らずにいくのよ!」
私の声が届いたのか、ユウマは一瞬振り返って「大丈夫です、先輩!」と笑顔で答えた。その笑顔に私は少し安心したものの、まだ油断はできない。
剣と剣がぶつかり合い、木剣が響き渡る音が訓練場に響く。ユウマは一生懸命に敵の動きに対応しているが、少しずつ疲れが見え始めている。
「大丈夫かな…」
不安が再び募り始めたとき、予感は的中する。敵役の騎士がユウマに鋭い一撃を放ち、ユウマは避けようとしたが足がもつれてしまい、またしても危険な状況に追い込まれた。
「ユウマ!」
私は思わず叫んだが、すぐに立ち止まった。今度こそ、彼に自分で立ち上がるチャンスを与えなければならない。そう自分に言い聞かせて、無理に手を出さないように耐えた。
ユウマが倒れ込む姿を見て、敵役の騎士は明らかに慌てた表情を浮かべ、私の方へ駆け寄ってきた。彼は何度も私を見てはため息をつき、明らかに心配そうだ。
「す、すみません、リーナ先輩!俺、わざとじゃなくて!本当にすみません!」
彼は必死に私に謝罪している。どうやら前回の攻撃魔法の件が頭に浮かんでいるらしい。あの時、彼を無意識に攻撃してしまったことが、今でもトラウマになっているのかもしれない。
「い、いいのよ、大丈夫だから!」
私は苦笑いしながら、必死で「落ち着いて」と言いたかったが、彼はもう謝ることに夢中で、まるで私がまた何か魔法を使うのを恐れているかのように見える。
その瞬間、謝罪に夢中になっていた敵役の背後で、ユウマがゆっくりと立ち上がっていた。そして、無防備な敵に向かって木剣を構え――
「せいっ!」
背中に一撃!敵役の騎士は「うわっ!」と声を上げて前のめりに倒れ込み、思わず地面に手をついてしまった。
「やったー!僕、勝ちました!」
ユウマが大声で喜びの声を上げ、私は驚きながらも笑顔になった。
「ユウマ、すごいじゃない!本当に一本取ったわね!」
私もユウマと一緒に喜び、二人でハイタッチをした。
「また俺かよ…」
敵役の騎士は、倒れ込んだまま天を仰ぎながらつぶやいた。その様子に、私は少し申し訳なく思いつつも、ユウマの成長を喜ばずにはいられなかった。
しかし、その光景を見ていた竜兄弟は呆れたようにため息をついた。
「兄者、あれは…勝利と言えるのか?」
「弟者よ、まあ…彼らが喜んでいるなら、それでいいだろう。」
ザグルとリグルは困惑した表情を見せながらも、二人の成長(?)を見守っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます