リーナ先輩と竜騎士ユウマの日々

第1章 第2話 守りすぎ？ヒロイン、全力の過保護モード

訓練場での基本訓練が終わると、次は模擬戦だ。ユウマも少しずつ動きに慣れてきた様子で、木剣をしっかりと握っている。その姿に、私の胸は再びドキドキする。だって、彼が真剣な顔をしていると、もうそれだけで素敵に見えてしまうのだから。

「さあ、ユウマ！今日は君がリードするんだからね！」

私は少し後ろに下がり、彼に前を任せる。とはいえ、ユウマがどんな動きをするか、しっかりと目を光らせている。もし何かあれば、すぐに私が飛び込んで助けるつもりだ。そう、彼を守るのが私の役目だ。

「はい、先輩！僕、今日は頑張ります！」

その言葉に、私は心の中で再びガッツポーズ。今日こそ彼が実力を発揮して、立派に模擬戦をこなす姿を見られるはず。そう思っていたのだが…。

「それっ！」

ユウマは勢いよく前に出て、敵役の騎士に木剣を振りかざした。だが、適役は冷静にその動きを読み、ユウマの剣を軽くかわして反撃してきた。剣の音が空気を裂き、その直後、ユウマの体が軽く浮かび、地面に叩きつけられた。

「…あれ…？」

ユウマが困惑した表情を浮かべながら尻もちをついているのを見て、私の胸は一気に熱くなった。何をするの！？どうしてあんな乱暴な攻撃を――いや、冷静に考えれば訓練だし、そんなに激しいものじゃない。だが、彼が負けたのが私には耐えられない。

「ユウマ！大丈夫！？」

私はすぐに駆け寄ろうとしたが、ユウマは手を振って「大丈夫です、先輩！」と笑顔を見せた。その笑顔がまた…なんというか、彼の無邪気さを際立たせるだけで、私の心の中で「もう許せない！」という思いが膨れ上がる。

「ああ、ユウマがやられるなんて…」

私の中で何かがプツンと切れた。

「リーナ先輩、僕、もう一回挑戦します！」

彼の言葉なんて耳に入らない。もう何が起きたかなんてどうでもいい。目の前にいる敵役の騎士――この場では彼が私の標的だ。

「ちょっと…あなた、やりすぎじゃない！？」

私は冷静さを保とうと努力しながらも、どんどん怒りが湧き上がってくる。木剣を構え、適役の前に立ちふさがった。

「えっ、先輩、僕やりますから…」

ユウマが何か言っているけど、そんなの今は関係ない。ユウマを傷つけた相手は、容赦しない！

「こっちも訓練ですからね！」

私はそう言い放つと、剣を振りかぶって一気に適役に襲いかかる。

一撃！適役の剣は弾き飛ばされ、驚いた顔をしてバランスを崩したところに、私は追撃を仕掛ける。もう一本、また一本…木剣が相手を打ち続ける。私の攻撃は止まらない。手加減なんてするつもりはない。ユウマを倒した報いは受けてもらうしかない！

「す、すみません！」

適役は完全に防御の態勢に入ってしまい、何もできなくなった。私の剣が彼を打つたびに、木剣の音が訓練場に響き渡る。私はついに適役を地面に追い詰め、勝ちを確信した。

「もう十分です！降参します！」

適役の声でようやく我に返り、私は剣を止めた。適役は息を切らしながら、木剣を両手で掲げて降参の意思を示している。ああ、すっかり夢中になっていた…。

「兄者、リーナ、やりすぎじゃない？これ、訓練だよね？」

「弟者よ、あれはもう…訓練じゃないな。ただの制裁だ。」

遠くで竜兄弟がまたしても呆れた声をあげているのが聞こえたが、気にしない。だって、ユウマがやられるなんて許せなかったんだから。

ユウマがぽかんとした顔で私を見上げている。…これはちょっとやりすぎたかな。

「リーナ先輩、すごい…僕、あんなに強くなりたいです！」

…え？ユウマ、そういう反応？私がルールを破ってでも助けたのに、彼は相変わらず無邪気に、私の力を素直に賞賛してくれる。まあ、彼が元気ならそれでいいか。

「大丈夫よ、ユウマ。君ならもっと強くなれるから！」

私は微笑み、彼の頭を軽く撫でた。さあ、これでユウマはまた一つ成長した…かもしれない。いや、むしろ成長したのは私かも。