第4話
「こんにちはっ!」
「はい、こんにちは。スキャンをお願いします」
「はいっ!」
2Fに上るゲートには常に警備会社の人が要る。こうやって個人登録している目のスキャンをしないと通して貰えない。スキャンって言ってもレンズをチラっと見るだけなんだけどね。もちろんダンジョンの1Fに入る時もするよ。
さて、いざ2Fへ。
ガラス張りの様な空間に入ると吸い込まれる様に浮上する。いつ来ても不思議な感じ。
1Fの景色とコメを横目に上層へと移動する。
ダンジョンって試験で出てくるから覚えたんだけど、基本的には
私は行った事ないけどね。
だって、外周まで行くなら乗り物がいるぐらい広いし。ダンジョン1Fの広さは、約18,000,000平方メートル。東京の新宿ぐらいの広さなんだよ!これも試験問題で出たことあるんだ。
因みにダンジョン内での乗り物は国の関係者ぐらいしか入れない。
これにも理由があって、ダンジョンって建設物が設置できない、仮に設置しても数時間もすれば不思議な事に消えちゃうし、穴を掘ったり木を切ったりしてもすぐに戻っちゃう。だからインフラは無理だから道路が無いと事故とか起こると大変だからね。
それとダンジョンの資源を持ち出そうとしても出た瞬間に消える。ダンジョン内の生き物も例外ではない。持ち出せるのは結晶石、私達は魔石って呼んでるけど、それだけだね。
だけど、2Fの入口はダンジョンに入って徒歩15分程で到着するからすっごく助かる。
そしてその2Fに到着!
1Fは視聴者の人達が大袈裟に騒いでいたけど、実際は周囲を観察して自律的に行動して虫を採取するAIロボット、
さて、2Fに着いたのは良いけど入口付近だとセンチネルに掃除されちゃうから盛り上がりに欠けるしなぁ。
3Fに行っても良いんだけど、3Fはキモいのいるんだよね……。ムカデとか蜘蛛とか。何故かこの虫達って毒とか無いから死ぬことも無いし、そこまで怖く無いんだけど見た目が、ね……。
仮に大怪我とかしたら監視ドローンや私のMD6が緊急信号を出してくれてすぐに治療できる人やら救助ロボが駆けつけてくれる。ただしダンジョン内の怪我は健康保険が使えないから高くつくけど。
悩んだ末にとりあえずは2Fの奥で配信する事にした。
どうせそんなに戦闘なんてしないしね。雑談メインのダンジョン配信でそこまで求められる事も無いし、みんなも分ってて大袈裟に言ってるだけ。獲物を見たいなら誰でも入れるし自分で行くでしょ。
それでも飽きさせず緊張感を醸し出さすのが配信者ってものなのですよ。
少し大袈裟なリアクションに好奇心を沸かすのがコツだってマネージャーが言ってたし。危険も無いテーマパーク並みの低層階の配信如きではマネージャーなんて着いて来ないから当然私一人。
男の人は論外として高校の友人とか試験勉強で一緒には来てくれないし、他のDtuberの人達とコラボなんて出来る程に私は人気も人脈もないんだよね……。
ぅぅ……、そう考えたら少し寂しいよ。
青空の下、入口から少し離れた森林の多い場所へと進む。
「皆さん、今日はこの森を探索します!ワクワクするね!」
ドローン目線で、私は元気よく話しかける。
少し奥に行くと木々が生い茂り、陽の光が木漏れ日となって地面に降り注いでいる。
「見てください!この光、すごく綺麗!」
当たり障りの無い無難な感想だけど、その美しさを視聴者と共有する。
でも本当にダンジョンって不思議だよね……。各階層は季節は同じで天気も同じ地形の違いはあるけど空もあるし太陽もあるんだよね。空の果ては、ある程度上まで行くと透明の壁で行き止まりとのこと。
ダンジョン内の生物や植物がどうやって生きてるのかもわからない。なぜ無限に生物が湧き魔石が取れるのか、地形を変える事も不可能だし、資源を外に持ち出すと消えるのか、40年も経ってるけど解らない事ばかりだね。
私が生まれた時からダンジョンは有るから自然と受け入れちゃってるけど、そもそも何故存在してるんだろ……?
「あっ、人がいる」
ぶつぶつと独り言の様にしゃべてるし、同業者かな。
ギルドに入ってライセンス持ちのエリートシーカーとかなると、視聴者数も再生回数も凄いし、超憧れちゃうよね。
雑談をしながら小道を進むと、森はさらに深く、緑に包まれていく。
「いつも思うけど、これ、本当の森と同じだよね……」
雰囲気は勿論のことに肌に感じる空気ですら外と何も変わらない。
違いがあるならば虫の大きさと種類の少なさだ。ダンジョンは決まった種類の生き物しか存在しない。1Fに出る虫は2Fにも出るけど3Fにいる虫は決して2Fには存在しない。なので10階層を超えたぐらいでは色々と存在はする。それもあるから選ばれた人達しか入れない。そこまで行くとかなりの危険が伴うからだ。
配信者としてはネタも切れないし羨ましい限りだけど、危険があるのは正直に怖い。出来るだけ危険を回避する様に様々な対策はしているらしいけど詳しい内容は発表されてない。国としても技術が盗まれるのを避けたいだろうから、そりゃそうかもだね。
そんな事を考えながら歩いていると葉っぱの間から差し込む光が、まるで緑の絨毯の上を滑るように美しく散っている。
「みんな、ここは本当に静かで、心が落ち着くね」
良い場所みつけたので、立ち留まり地面に座って視聴者に話しかける。
視聴者からは「いいね!」や「癒される!」というコメントが流れる。私はその反応に嬉しくなる。
暫くその場で話をして、周囲の音に耳を傾ける。
「ねぇ、みんな、何か聞こえない?」
ふと、森の奥からガサガサと草が擦れる音が聞こえてきた。
「もしかしたら、何か面白いものが見つかるかも!」
立ち上がりドキドキしながら音の方向へ歩み寄る。
音の正体は、2人の男の人だった。
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