第3話


――ふぅ。


大きく深呼吸をして追尾型ドローンを取り出す。


超小型で高性能なMD6。正式名はモーフィングドローンMorphing Drones6型。

状況に応じて形状を変えることができる撮影機能付きドローンで、空中で羽を広げて安定飛行したり、狭い空間に入るためにコンパクトに折りたたまれたりする。空中、水中、陸上の様々な環境で動作可能なマルチモードドローン。


特徴は多機能、変形能力、様々な環境に対応で、用途としては 空中および水中探査、災害現場での救助活動、軍事用偵察が目的で作られたらしいけど、今じゃ一般販売もされ配信者の私には欠かせない相棒だ。


MD1はサラリーマンの平均月給ぐらいの価格だけど6型の値段は高級車並み!


お高い……。


鏡で髪と化粧のチェックをして。




さて始めましょう。



「みなさん、こんにちは!リナです。今日はこの配信ライブに来てくださって、本当にありがとうございます!みなさんと一緒に素敵な時間を過ごせるよう、全力でお届けしますので、ぜひ最後まで楽しんでください!もし途中でコメントがあれば、どんどん書いてくださいね。それじゃあ、さっそく始めましょう!」



毎回最初は緊張する。噛まずに言いきれてよかったぁ。


『ついに配信始まったー!でも、虫とか怖すぎる……!』

『お、今日はポニーテールなんだ!冒険にぴったりな感じ!』

『え、なんか虫の音聞こえたんだけど!?ゾクゾクする……』

『その軽いレザージャケット、カッコいい!動きやすそうでいいね!』

『え、ショートパンツとブーツの組み合わせ、アクティブで可愛い!』

『やばい虫とか出てきたらどうしよう……想像するだけで鳥肌立つ!』

『巣穴とかあるかもだし気をつけてー!』

『サイドバッグ持ってる!やっぱり冒険には必需品だよね!』

『手首に巻いてるバンダナもオシャレだし、雰囲気に合ってる!』

『今日はアクセサリー控えめ?シンプルだけど機能的で冒険向き!』

『うわ、足元に虫が這ってるシーンとか絶対無理かも……』

『そのダークグリーンのトップス、自然に溶け込むデザインでステルス感あるw』

『ベルトにポーチいっぱいつけてる!アイテムいっぱい持ち込む準備万端だね!』『上の階層に行ったら、絶対に虫だらけだと思う!逃げる準備して!』

『靴はハイカットのアクションブーツ?地面をしっかり掴みそうでかっこいい!』

『髪にさりげなくリボンつけてるのが可愛いし、強そうな見た目とのバランスがいい!』

『虫の大群が出てきたらコメント欄大パニックになりそうw』


早速にコメが流れていく。ありがたや、ありがたや。


やったー!しかも応援コメばかりだよ。

アンチコメも無いしやる気でてきたぞー!


初っ端からアンチに湧かれるとテンション下がるのよね……。

でもフラグ立てるのやめてね。


その後はテンポよく私はDライブ配信を始めた。


私はリナ、本名だよ。やっぱり呼ばれ慣れしてる名前が一番だからね。

これでもそこそこに人気のあるDtuberなんだよね。えへへへ。


バベルの塔こと、今では私達の世代じゃダンジョンって言った方が分かりやすいかな。そのダンジョンライブ配信Dライブを中心に活動している配信者なんだ。


バベルの塔が出現してからは40年立ち、民間にも開放されたのが、つい3年前。

それと同時にDtuberって配信者が出るようになった。


ダンジョンの1Fから3Fは日本国籍の成人で犯罪者とかじゃなければ誰でも入れる。未成年は保護者同伴が義務付けられてるんだ。因みに日本の成人は18歳から。


そして私は、なんとその18歳なんだ。


そう!配信は前からやってたけど、やっと今年にDtuberデビューしたばかりの超新人!

期待の新人って言われてるんだよ! どうよ!すごいっしょ!


『急にドヤ顔きた!何が起きたのか教えてほしい!』

『ドヤ顔100点!でも、理由は聞いていいかな?』

『そのドヤ顔、プロレベルじゃん!』

『ドヤ顔炸裂!これは何か大成功の予感?』


あっ、顔にでちゃったみたい。


「ううん! なんでもないよ! わくわくしてるだけだから気にしないでねっ!」



気を付けないとこの子MD6ドローンはすぐに表情の変化とか察知して映しちゃうからなぁ……。


それと、超薄型コンタクトレンズ型デバイスを装着してて、それでコメを見てるんだ。

透明なディスプレイでコンタクトレンズそのものは透明で、普通に視界を確保できる。必要に応じてホログラムのように文字や画像、データが浮かび上がる優れもの。


他にもホログラフィック・ディスプレイ、 手のひらサイズのデバイスから、立体的なホログラフィック映像が浮かび上がる物や、 脳波操作インターフェースBWI、使用者の脳波を読み取り、音声を発しなくても意思を伝達可能ってのもあるけど、私はコンタクトレンズデバイスを使ってる。


昔は端末を手で持って態々画面を確認してたとか……。それでダンジョン配信とか無理ゲーすぎる。


今は2Fを目指して歩いてるところ。


1Fは蚊やハエの大きなのが出る。大きいって言っても手のひらぐらいだけど。


私の武器は棒の先端に網目があるやつ。


ぶっちゃけハエたたきにしか見えないんだけど、結構ポピュラーな武器だよ。でも性能は結構いいんだ。


電撃機能付きでハエたたきに電流が流れるようになって、敵に当てるとスタン効果が発動する。これで相手の動きを止めた後、他の攻撃で追撃できるんだ。


それともう一つの武器は普通の小型サバイバルナイフ。日本は銃刀法の規制が厳しいけどダンジョンでは小型のナイフなら所持は可能だよ。監視の目がすごいから人に向けると即逮捕で永久にダンジョンの出禁にされちゃうからね!


2Fも昆虫類、3Fも昆虫類だけど少し強いのが出る。

4F以降は昆虫類に加えて爬虫類とかも出るらしく一般には解放されていないんだ。行くには講習と試験を受けて免許が必需となるかな。


成人した私はすぐに講習に行ってるけど、免許を貰えるまではまだ当分かかりそうかな……。試験とか結構大変だからねぇ。


国によっては子供でも自由に何階層までもいけるらしいけど日本は厳しいんだよね。当然その逆で入口を見る事すら出来ない政府独占って国も多々ある。まぁ上位層は普通に死者とか行方不明者とか出るらしいから当然かもだけど。


そして日本は10階層以降は政府関係や国指定のギルドとか、エリート探索者シーカーしか行く事は出来ない。

エリートシーカーはBランクから始まってAランク、更にその上のSランク国際ライセンス所有者とか呼ばれてる人達のこと。

免許の無い人達、所謂一般人はランク自体無いし、免許持ちってだけの人は一纏めにCランクのシーカーって呼ばれてる。


そして今現在は攻略が公表されている階層は日本で32階層、トップのアメリカでも35階層、他の国は30階層にすら行けてないらしい。だから日本はがんばってる方だと思う。なんでも30階層から別世界になってるらしいんだけど映像公開はされてないからはっきり分からないんだよね。


別世界になってるって言うのも一般には公開されていない。なぜそんな情報を免許も無い私が知ってるかって言うと……。


「あっ、2Fの入口が見えた!」


ガラス張みたいな円柱の中に入ると上の階層に行ける。この仕組みですらお偉い学者の人達が解析してるらしいけどまだ解らないらしんだよね。ほんとダンジョンって不思議だよね。




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