エピローグ
第2話
西暦2100年
人類は衰退の時代に突入していた。
その理由は、今では小学生の授業でも教えられるほど、広く知られている。
戦争、パンデミック、AIの自己進化、太陽の活動、超新星爆発、そして隕石の衝突など、さまざまな仮説が語られる中で、最も大きな原因は人類自身の環境破壊だった。
温暖化や森林伐採、生物多様性の喪失は、もはや避けられない運命のように進行していた。世界中で戦争が勃発したが、核戦争には至らなかった。それは、燃料が枯渇したためであった。環境の変化により、エネルギー供給が不安定になり、経済活動にも深刻な影響を与え始めていた。
燃料不足は輸送コストを押し上げ、物価の高騰を招き、グローバルな経済危機を引き起こした。再生可能エネルギーへの移行も遅れ、環境への負荷は増大する一方だった。そして社会的不安が加速し、エネルギー資源を巡る争いが生まれた。
しかし、そんな絶望の中で世界を救ったのが、2110年に突如現れた「超弦未確認物体」であった。
この物体は、超弦理論に基づく理論物理学の産物であり、誰もが理解できない次元が存在することだった。円形の塔のようなこの物体は、世界の190カ国に同時に出現した。
国によってその名前は異なるが、日本では「バベルの塔」と呼ばれ、神の門としての意味を持っていた。物体が空に浮かんでいたその時、全ての人々が空を見上げ、その存在を理解することはできなかった。
バベルの塔
ある国では雪の降る深夜に、また別の国では焼けるような日差しの中、さらに別の国では弾道ミサイルが飛び交う最中に、空に浮かぶその巨大な円柱を目撃した。全ての人々が見上げ、ただ驚愕するしかなかった。
その物体は、やがて高度を下げ、陸に接触した。しかし、その接触は不思議なもので、周囲の建物や生物には何の影響も与えなかった。地面に目視できるにもかかわらず、触れることはできなかったのだ。ただ唯一、開かれた「門」のみが触れることができる場所だった。
その門が静かに開くと、内部には緑豊かな大地が広がっていた。太陽が照らし、大地には草木が生い茂り、地球上で見られる生物が存在していたのだ。しかし、そこには異常な現象が待っていた。外の大きさと内部の広さが合致せず、法則を無視した空間が広がっていたからだ。
その内部で発見されたのは、通常よりも数倍の大きさを持つ虫類だった。しかし、それは普通の虫よりも脆弱であり、子供でも簡単に倒せる存在だった。そして、驚くべきことに、解体した虫からは無色の結晶が採取された。
この結晶を調査する中で、北極と南極が存在することが明らかになった。この発見は世界を震撼させた。各国は競うようにその研究を進め、新たなエネルギー源としての可能性が模索された。数年後、実用性が立証され、そのエネルギーはさまざまな形で応用されていった。
2120年、依存の時代
それから時は流れ、2120年。人類はその未知なるエネルギーに依存する生活を送っていた。環境危機から救った「バベルの塔」は、希望の象徴となり、同時に新たな問題の芽を孕んでいた。果たして、人類はこの恩恵をどう受け入れるのか、未来は誰にも予測できない。
バベルの塔から得られたエネルギーは、人類の生活を一変させた。
都市は新しい技術で彩られ、電力不足は過去のものとなり、交通は迅速かつ無公害になった。人々は新たな豊かさを享受し、未来に希望を抱くようになった。
エネルギーを生み出す結晶は、まるで魔法のように無限に湧き出てくるかのように思われたが、実はその採取と管理には高いリスクが伴っていた。塔の中で採取される結晶は、環境への影響を無視できないほどの膨大なエネルギーを秘めていた。政府や企業はその資源を独占し始め、結晶を巡る争奪戦が再び幕を開けた。
結晶を巡る争奪戦
各国の政府はバベルの塔を管理し、結晶の採取を進めた。しかし、塔にアクセスできるのは限られた者だけだった。一般市民たちは、エネルギーを享受しつつも、その背後に潜む不安を感じていた。「果たしてこの資源は本当に無限なのか?」という疑念が、次第に人々の間に広がっていった。
さらに、タワーの周囲では秘密裏に研究が進められていた。軍事機関や民間企業は、結晶の力を利用して新たな兵器やテクノロジーを開発し、パワーバランスを崩そうとしていた。これにより、国際的な緊張が再び高まることとなった。
2125年 無限の終焉
「果たしてこの資源は本当に無限なのか?」という疑念が、ついに現実となった。バベルの塔から得られるエネルギーは、最初は無限のように思われていたが、無限に沸く虫数に変化は無いが、倒して得る結晶のドロップ数に変動が起こり始めた。かつては、1体から1個の結晶が得られていたのが、今やランダムな数になったのだ。
この変化は、各国の人々に不安をもたらした。「無限」と信じていた資源が、実は限られたものである可能性がある。これに伴い、世界各国では塔からの結晶を巡る略奪が始まり、再び国家間紛争が勃発した。人々は再び戦争の時代に突入し、かつての経済危機と同様の混乱に見舞われることとなった。
2126年 階層の登場
そんな最中、塔の内部から2階層へ通じる
依存した人類には、この新たな機会を無視することはできなかった。塔を登ることは、国際的な進歩の象徴となり、各国はこぞってその攻略に挑むこととなった。
2127年 塔の自由化
2126年の階層発見に伴い、各国は塔へのアクセスを巡る争いを続けていたが、その混乱の中で驚くべきニュースが飛び込んできた。日本国議会で、人数制限や階層規制はあるもののバベルの塔の民間への自由化が成立したのだ。そう、人海戦術に切り替えたのだ。
これにより、一般市民も塔に自由にアクセスできるようになり、結晶買取による一攫千金狙いやゲームの様に冒険を求める者、更には動画配信で人気を得る者など様々なジャンルで塔は一気に人々の注目される舞台となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます