第23話 頑張るオリバー

 オリバーはまず、国中に広がる混乱を鎮めるため、信頼のおけるスペイニ国の騎士や護衛を再編し、治安回復に尽力した。スペイニ国王に冷遇されてきた騎士の中にも、不遇に耐えながら腐らずに力を蓄えてきた者たちが少なからずいた。決して多くはないが、オリバーが国の再建にあたり、その力に目をつけるにふさわしい者たちだった。


 オリバーは彼らの潜在的な能力を見抜き、適切な役割を与えた。任せられた仕事で成果を上げた者には感謝と褒め言葉を惜しまず、失敗があっても叱るのではなく、改善点を共に考える。やがて士気は高まり、街中にかつての活気が少しずつ戻り始めた。


 さらには、オリバーは長期的な安定のため経済の再建にも手をつけた。農業を振興するために荒廃していた農地を整備し、住民たちに野菜の種子や苗を無償で提供する。自らも土を耕し、民と共に汗を流す姿勢を見せたことで、住民たちは勇気づけられ、再びこの土地で生きる気力を取り戻した。


 また、周辺国との交易を再開させ、フリートウッド王国との新しい貿易協定を結ぶことで、市場の活性化と経済基盤の強化を図った。ローマムア帝国からの物資も次々と届き、国民にとって生活の質は目に見えて向上していった。


 アレクサンダー皇帝はスペイニ国を属国としてではなく、独立した一国家として復興させたいという意向を示し、オリバーに最大限の支援を提供した。アレクサンダー皇帝の期待に応えるように、民たちも一丸となって復興作業に尽力し、次第に彼らの生活環境は改善されていく。公共事業として荒れ果てた道路や井戸の修復も進められ、交通や生活用水の供給が安定することで、住民たちの表情には少しずつ安心が広がり始めた。


 オリバーのこうした働きぶりは人々の心を掴み、次第に彼は「救世主」として国民から称賛されるようになった。やがて、人々の間ではオリバーの噂が飛び交い、彼の行動がロマンチックな物語として語り継がれるようになっていった。


「知っているかい?  オリバー様は皇女様のお心を掴んでいるんだそうだ。この国の復興だって、すべて愛する皇女様のためなんだって」


「なんてロマンチックなの!  オリバー様と皇女様が一緒になれるように、この国をもっと発展させなくちゃ」


「オリバー様と皇女様がこの国を治めてくだされば、私たちは安心して暮らせるわねぇ」


 そのような噂話が広まるにつれ、住民たちの間では、オリバーと皇女ビクトリアアグネスの未来を後押ししようとする声が次第に強まっていった。そして人々は各々の立場から精一杯の協力を捧げ、町を活気づけ、さらなる発展を目指して働いた。人々の献身と熱意は、驚くべき早さでスペイニ国を潤し、見違えるような発展を遂げさせたのだ。


 この進展を耳にしたアレクサンダーは、オリバーの尽力と民たちの変化を確かめるため、スペイニ国へと向かった。彼が目にしたのは、活気に満ち、人々が希望に溢れる街の姿だった。オリバーへの敬意と信頼はこの国に浸透し、彼が紛れもなく民の「英雄」となっているのを確かめる。アレクサンダーはその様子に感銘を受け、同時にオリバーと妹の未来を深く考え、ひとつの決断を下す。


 その決断とは――

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