少し長めになった電話は唐突に切れる。


「穣くん」

「………」

「ごめんね、予告無しで暢ちゃんと話させて。怖がらせたでしょ」

「……花様…っ…」

「一応気遣い入れろとは言ったけど。殺気殺さないで話すの好きなのよ、暢ちゃん。暢ちゃんとガッツリ話すのは?」

「初めてです」

「…すごいよ。褒めてたもん。殺気も後半薄めだった」

「…それは……うっすらと…」


穣くんの全身は今、細かく震えている。

敵グループの人間に腰を抜かさせるくらいの殺気を出せる穣くんでも、上には上がいるのだ。


「帰ったら、色々詰めないとね」

「花様」

「女の子達のプレゼント配布第二弾は嶺臣がやるから」

「はい」

「……クラブ【ローズ】の采配も多分。かっちゃんが復帰できるまでは暢ちゃんやるだろうしなあ」

「……」

「あ、大丈夫。女の子にはチャラくいけるから、暢ちゃん。とりあえずは私もあとから女性陣に連絡フォローしとく」

「……申し訳ございません」

「私こそ。よろしくね」

「お願い致します」

「穣くん」

「三嶋がしていたであろう事は私は致しません」

「……穣くん」

「私は線の外にいた者。無礼なきよう、お教えください」

「ありがとう」


想いはあるだろうに。

私は穣くんのこういうところが気にいっている。


かっちゃん………。

二日前までは予想していなかったろうに。

今日の無様な姿を。




──彼はまだ、理不尽を知らないのかもしれない。

与えられずとも尽くす自分に愛しさを彼は残している。

私と嶺臣には解らないそれを、彼は後生大事にしている。

似たような事をしていても、同じに見えても。

天と地ほども違うことなど幾らもあるのに。


──久しぶりの【休み】。動きはじめた運命に似たものが私達を流転させてゆく。


吉凶どちらにせよ、前に進む道しか残されてはいないのだ───。

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