穣くんはゆっくりと私以外の四人に続ける。


「ここは……花様、よろしいですか」

「…いいよ、しかたない」

「嶺臣様と花様だけが知る隠れ店。お二人でしか来店されたことのない店。このような事が無ければ誰にも【知らせる】事の無かったお店です。先ほど私も初めてお聞き致しました」

「!」

「……っ!」

「花様!」

「花様…」

「……大きく、動かすことになっちゃったからね。嶺臣にも『良いのか?』とは聞かれたけど」


私は穣くんとかっちゃんに話したことをもう一度言う。


「私は正直に答えたわ。

“良くはないわ、私と嶺臣の隠れ家の、一番上だもの”」


四人、それぞれ息を呑んでいる。


「“でも、あの店は嶺臣のでしょ?渡すなら餞別せんべつはいるわ?かっちゃん自身はそんなもの要らないだろうけれど。嶺臣っていう【上】からの餞別ケジメを新オーナーとして拒否するほど彼は馬鹿じゃないでしょうし。

十七人も【下】の店から身を切らせて、なにもしないなら笑われるのは嶺臣よ”

“これは余計なおせっかい。でも必要なおせっかいよ”」


そして言わなかった事を付け加える。


「いくら、土壌に合わなくなった薔薇でも、薔薇は薔薇よ。私の為に枯らしたならば継いで新しく咲く薔薇に最初に水を与え、支える蕾を飾るために、一つくらい私も茨で傷をつけるわ。必要な傷ならば」


すると、穣くんが苦笑する。


「…花様、うちの三嶋が聞いたら悔しがりますね」

「ん?」

「ちょっと失礼。『なんで、こんなかっこいい花ちゃんの言葉を俺はお前からきかなきゃならないんだよ!ふざけんな、穣!って(笑)』」

「似てる(笑)、ソックリ(笑)。さすが側近♬」

「花様、有難うございます」

「私達……」

「私達頑張ります」

「有難うございます、花様」

「これからもよろしくね」

「「「「はい!」」」」

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