翌日、昼。
都心からちょっとだけ、離れた
そこの離れの客間に。
私と、昨日のローズの五人と。有紗ママ、ラ・ルーナのママ。そして三嶋翔と、鎚谷穰が揃っている。
「うー……っ、頭痛が痛い」
部屋の隅で座ったまま、
「かっちゃん、サムい」
笑いながら指摘してやると。
「頭がいたいです(泣)」
「…だから言ったじゃん、別に鎚谷さんと私で良いから、かっちゃん休んでなさいって」
「私も申し上げました(笑)」
「…笑うな、
「それは申し訳ございません」
「絶対行くんだってきかないから連れてきたんだよ?かっちゃん」
「…だって」
私はと言えば。座椅子の横に肘置きの台。
膝には温かくて柔らかいブランケット。
格好はなんちゃってゴスロリ風ワンピース。全体がパープルな中にブラックが効いていて、結構可愛い。
っていうか、コレ、首もとはきっちりだけど腰部分、締め付けすぎないし膝下も長くて怪我隠せるからって嶺臣が選んだんだけど。もろに趣味に走ってる。
ま、当然か。
【俺のらしく】してろ。
とか言われたな。
昨日の事を何も
短くなった髪をじっと
ちょっとだけ恥ずかしいけど嬉しくて。
うん、としか返せなかった。
「…大変お待たせ致しました。失礼致します」
声がかかったのは廊下から。
「…花様、入ってもよろしゅうございますか」
「どうぞ」
答えると、四十半ばくらいの女将さんが静かに入ってくる。
彼女は、私の対面の位置までくると一メートルほど間を開けて座り。
他の誰も見ずに、私にだけ、深く手をついて礼をする。
「このたびは、わざわざのお越し、誠に有難うございます」
「こちらこそ。急なことですみません。色々気も使って頂いて。わがまま聞いて下さって嬉しいです」
「…とんでもない。花様のお急ぎ事、私どもをお心の端に留め置き、思い出して頂いてこれ程嬉しいことはございません」
「だといいけど(笑)」
「取り急ぎお部屋ご用意させて頂きましたが、不備、ご不快ございませんか?」
「…全然。離れの、いつもくる方とは逆のお部屋みたいだけど」
「はい。こちらのほうが若干、戸口より近く。
「池や花樹を楽しむなら、こっちも良いかも」
さりげなく交わされる社交辞令。
ま、お約束というやつだろうか。
玄関から近い部屋が用意されたのには、今、膝を怪我している私をあまり歩かせたくない嶺臣の意志が多分に働いているのだろう。
でも、私以外の人は驚きが顔に出てしまってる。
何故なら、女将さんのいう、【
純日本庭園で、絶対名の知れた庭師の定期手入れとかされている感じ。
そちらにはあまり詳しくない私でも、屋敷といっても
通ってくるとき、私は鎚谷さんが姫だきしてくれたけど、あとの人は当然、歩き。
森の中のような、緑に囲まれた専用駐車場から特別な専用客用の門を通り、離れまでくるのに数分以上庭の中を通るんだけど。
みんな、目が真ん丸になってたもんね。
かっちゃんは頭痛と、それを上回る、【なんで
残念。
全部顔に感情出てて丸分かり。
私と鎚谷さんには華麗にスルーされてた。
だって、こういうかっちゃんはなにげに面倒くさい(笑)。
「花様、ご用意はすでに」
「終わった?」
「一つ置きました客間と、その次の間の襖を取り払い、繋げまして」
「結構本格的」
「花様からのお話ですから」
「…嶺臣が女将に。
“今日も変わらずに綺麗なんだろうな。うちの小鳥をよろしくな”
って♪」
「あらまあ、嬉しい。花様のお可愛らしさには叶うべくもありませんけれど。宜しくお伝え下さいませね」
「ええ」
私と女将以外には??な会話が続いたところで。
鎚谷さんが。
スーツの内ポケットからスマホを取り出し。
一、二秒指先を軽く動かしたあと。
「ご歓談中失礼致します、花様」
「ん」
「ご指示の通りに致しました。ご心配お掛け致しまして、誠に申し訳ございませんでした」
「そっか、ありがとう」
そこで。
私は振り返り。
まだ畳の上で前傾姿勢で痛みと格闘中のかっちゃんに。
「かっちゃん、伊砂さんがくるから。二人でこの部屋で大人しくしてて?」
「!!」
「嶺臣に言われてたよね、
“今度こそはお前のわがままでついていくんだから、花乃の言うことは絶対だ”って」
「………っ…」
「男の二人は寂しいかもだけど、おんなじ離れの中の部屋移動だから、心配ないよ。鎚谷さんもいるし」
「……なんで穰は一緒に行けるの、花ちゃん」
「逆に聞く。
かっちゃんは今私と一緒に【向こう】へ動いて、何が出来るの?」
「……っ……」
「鎚谷さんは。あなたがそんな状態だから。あなたの下についてくれている者として、三嶋翔の
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