勿論、媚び目的の人間が近づいて来ない訳じゃないし、その方が多い。

上目遣いでしためずりして機嫌をうかがう女のほうが圧倒的だ。


そんなの当たり前だろう。

自分たちの上に君臨している男達が溺愛している、女なのだ。

羨望、嫉妬。

その位置を、奪いたい──。

叶わなければ…少しでも自分に旨味うまみを。


でも。たとえ爪の先でもそれを【表】にあらわしたなら。

問答無用。

彼女達は二度と私には近づけない。

三嶋みしまかけるが、赦さない。


内心の爪など夜の女には標準装備だ。

でも。利口な女は。

欲を。望みを。

隠しきる。見極める。そして点を線に繋げる。


それが出来る女と見定められて初めて。

私と引き合わされた持ち店の女達は三嶋翔と一緒にいる私と、同じテーブルにつく事を赦される。


彼の【姫】の前に、かしずくことを認められるのだ───。






最も。

私は自分がそんなごたいそうなものだなんて思ってはいない。


周りの女の眼が私の【公開可能な私的情報】である、三嶋翔の大事な【姫】、そして三嶋翔の『上位』に君臨する衛藤嶺臣の【可愛いオンナ】、それを知り、変わっていっても。


私はわたし。

わたし以外の何にもなれない。

私はわたしのまま、嶺臣の愛玩となり、三嶋翔の姫なのだから。


変わらない。

それが私の今持てる矜持プライド──。


…と言えるほど、綺麗なものでは、無いけれど。

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