第28話 水瀬 唯視点
私の原点は推しへの憧れだ。推しがやっていることなら何でもやってみたい。推しに少しでも近付きたい。そんな気持ちで始めた前世での数々趣味。でも憧れた一流達には届かなかった。あと一歩足りない。その一方が果てしなく遠い。そこそこの成果は出せたとは思う。でも幼い頃脳裏に刻み込まれた場所には最期まで届かなかった。
届かないのは分かっていた。私は彼ら彼女らのような天賦の才はないから。努力でみっともなく届きもしない頂きに手を伸ばして、縋りついているだけの凡夫。それでも……いや、だからこそ!私は強く憧れたのだ。
不可能はないとヘップバーンは言った。もしこの世に不可能がないのなら……1%でもそこに可能性があるのなら!私が歩みを止める理由は存在しない。それが何年後でも何十年後でも来世でも良い。
私は絶対
その甲斐あってか私は今一人のVTuberとしてここに立てている。そんな私が……VTuberからの依頼を受ける!?あぁ神様ありがとう……。
─なんかよく分かんないけど良かったね!─
え?何か今返事が……まぁいいや。ハデス様からの返事とか今はどうでもいい。
─え?ちょっと!酷くn─
うるさい黙ってて!
─あ、はい─
それに彼女には天賦の才がある。彼女はただの努力の産物だと思っているみたいだけど彼女のそれは天賦の才だ。たしかにあの技術は100%彼女の努力によるとのだ。私がいくら望んでも手に入らなかった思いを相手に叩きつける力。感情の暴力とでも言おうか……。
それがない私は……私が手に入れた力は……空っぽで……空虚だ。
それでも私は歩み続けよう。天賦の才がなくったって二度目の人生は始まったばかりで時間ならいくらでもある。今世で私は……天賦の才を模倣する。でもとりあえず今は依頼をこなそう。
蒼井ちゃんにあんなことやそんなことを囁いてもらうんだ〜ぐへへへへっ……ドゥフッ。おっと、嬉しくてつい気持ち悪い笑い方をしちゃった。そろそろ真面目にやりますか。
(仮題)
とある用事の帰りに自分へのご褒美を買うべくコンビニに入り、買い物を終えた男がコンビニから出てくる。
「ねぇ!そこのお兄さん!」
(気付くと俺の周りには誰もいなかった。さっきまではいたはずなのにどうしてこんなに急に静かに……。いや、ガキんちょに話しかけられてるんだし反応くらいしてやるか。)
『ん?俺か?俺になんかようでもあるのか?』
「お兄さんにお願いしたいことがあるんだ!ほんとにちょっとしたことだからさ!」
『聞くだけ聞いてやるよ。』
「お兄さんの精力を吸わせてくれないかなって!」
耳元で囁かれる男。
(なんでこんなに近くに!?さっきまであそこにいたはずなのに……。)
『何言ってんだよお前さんは……。そんなフィクションに出てくるサキュバスじゃあるまいし。』
「わぁ〜よくわかったね!ファンタジーとか読む系?そういうシチュエーションとか妄想しちゃってる感じ?」
『まさか、妙に静まり返ってるのも……。』
「そうだよ!私にかかれば朝飯前ってわけよ。そんなことよりさぁ、お兄さんのお家に行こっか!」
『は?お前なんか連れて行くわけないだろ。』
「
(何度言われても断るだけだ)
『わかった。』
(は?今口が勝手に……)
「お兄さんありがとう!」
(こいつまさか俺の身体を……)
「ふふふっ」
──────────────────────────────
「さっそく始めたいところだけど……お兄さんちょっと精力吸っただけで死んじゃいそうだから、まずは精をつけてもらわないと!」
『は?』
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