第3話 文化祭のドタバタ劇

「え、モグたち…どこ行ったの!?」


文化祭の準備が進む学校で、桜は焦りながら校内を探し回っていた。モグとその仲間たちが、あちこちに散らばって好き勝手に動き回っているからだ。普段の生活なら何とか対処できるが、今日は文化祭の準備で学校全体が慌ただしい。そんな中で異次元生物たちが自由に動き回れば、ただでさえ賑やかな文化祭は、さらに大混乱になることは目に見えている。


「お願いだから、静かにしててよ…!」


桜は心の中で叫びつつも、手にはめたミトンを使って、焼きそばを盛り付ける手伝いをしていた。クラスで運営する屋台の準備が佳境に入っているのだが、モグの姿が見えないことが気がかりで仕方ない。


そのとき――


「キャー!誰か、お菓子が全部なくなってる!」


廊下の方から悲鳴が聞こえた。桜は嫌な予感を覚えつつ、すぐにその方向へ駆け出した。案の定、モグとその仲間たちが、お菓子の出店で一斉に食べ物に群がっているではないか。


「モグー!やめてー!!」


桜は叫びながらモグたちを止めようとしたが、彼らは桜の声に気づく様子もなく、次々とクラスメイトたちの作ったお菓子を食べ尽くしていく。焼き菓子、キャンディ、クッキー――何もかもがあっという間に消えていった。


「これ、どうすんの…」


クラスメイトたちは状況に気づかず、ただお菓子がなくなっていることに戸惑っている。桜は必死で言い訳を考えながら、なんとかモグたちを引き離そうとするが、彼らの食欲は止まらない。


「もう、勘弁してよ…」


その後も、モグたちは教室内を駆け回り、焼きそばの具材を食べたり、飾り付けの風船を割ったりと、次々に騒動を巻き起こしていった。桜はそれを追いかけながら、汗だくになってモグたちを止めようとするが、文化祭は完全に混乱状態に陥ってしまった。


やっとのことでモグたちを捕まえた桜は、ほっと一息ついたが、クラスメイトたちは大混乱の中で立ち尽くしていた。


「えっと…ごめん、みんな…」


桜は申し訳なさそうに謝るが、モグたちの起こした騒ぎはもう収拾がつかない。


「もう、何とかしてよ、モグ…」


しかし、モグたちは桜の困惑をよそに、満足そうにニコニコと笑っていた。どうやら彼らにとっては、楽しい文化祭だったらしい。


「とにかく…次はもう少し大人しくしてよね」


桜はため息をつきながら、モグたちを連れて帰ることにした。文化祭は一応無事に終わったものの、その裏ではドタバタ劇が繰り広げられ、桜の気疲れは増えるばかりだった。

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