第22話 襲撃③

「ありゃりゃ、村が素晴らしい光景になってやがんの」


明らかに不謹慎極まりない感想を述べるショーエイ――シェナに聞こえてなかったのが幸いである。


「……マナ?」


彼は毒溜まりの中で白目を向いて痙攣をしながら倒れているマナの元に向かい、彼女と液体をスキャンし、分析する。


(死んではいないが生体反応が消えかかってる……このままだと長く持たねえな……この液体はこりゃあ――)


彼女は即効性の毒にやられたのだと認識する。


「しょ、ショーエイさん!マナさんはこいつの毒を浴びて――!」


シェナからの事実を聞いて、彼は不敵な笑みから一気に怒りを顕にしてボスゴブリンへ視線を向けた。


「あ?マナの獲物は俺だぞ。なに差し置いて先に殺そうとしてんだコラァ!」


……別の意味に腹を立てているショーエイ。まあ共通の敵としているのは幸いか。


「あ~あ、とうとう俺を怒らせちゃったね?容赦しねえぜ、八つ裂きにしてやらあ」


指間接をバキバキに鳴らして殺る気に満ち溢れるショーエイに対し、ボスゴブリンは。


「お前も、あの女と同じように、死ね!」


再び深呼吸をして、間を置き口から大量の毒を吐き出して彼に全身浴びせた。


「ショーエイさん!」


「もうすぐ、お前、死ぬ………ん?」


しかし、ショーエイは毒溜まりに立ち、全く余裕そうに不敵な笑みを浮かべている。


「こいつ……毒、効かないのか!?」


全身に激痛が走ることなく、麻痺などもなくゴブリンへのっそり近づいていく。ボスゴブリンは再び毒を浴びてるも彼は止まることない。


「当てが外れたようだな、クカカカカ!!」


劣悪な環境、高濃度の放射能汚染、化学、細菌汚染、宇宙空間などの普通の人間なら間違いなく危険な環境下での活動を前提として開発されたショーエイにたかが生物の毒ごとき通用するはずなどなかった――。


「こんなクソばっちぃゲロを何度も俺に浴びせやがって……覚悟は出来たかこのゲロ野郎が」


「………………」


毒が全く通用せずじわじわ迫りくるショーエイにボスゴブリンは圧倒されて後ろへ退き始める、すると。


「こ、この女、どうなっても、いいのか!」


巨大な左手で握りしめたシェナを前に出して盾にする卑劣なゴブリンに対して、


「やりたきゃ勝手にやれや。俺は知らん」


案の定、即答するショーエイ。


「な…………」


「どのみち、てめえは死ぬだけだがな――――」


「ぐぬ……!」


痺れを切らしたボスゴブリンはシェナを地面に叩きつけようと左手を振り上げた。


「キャアアア!!!」


だが、ショーエイはブースターを展開して急加速で突撃。「シュオオッ」と右手全体をプラズマエネルギーを纏い、その手刀で下から振り上げ、その丸太のような太さと固さを持ったゴブリンの左腕をいとも簡単に溶断してしまった。


「ぐああ……!」


切れた左腕がドサッと地面に落ちて、持ち主から離れた左手が開き、シェナがやっと解放される。


「え………え………っ」


何が起きたか理解できずあたふたしている彼女にショーエイが、


「邪魔だ、早く離れねえとぶっ殺すぞ」


「…………………」


とぶっきらぼうに言い捨ててると彼女はすぐさま地面に転がっているロッドを拾い上げてマナの方へ一目散に下がっていく――。


ニヤニヤと気味の悪い笑みをしながらジリジリと迫ってくるショーエイにゴブリンは。


「う、うおああ!!」


右手を全力で振り上げて、彼をぺしゃんこに叩きつけようと振り下ろすが、やはりいとも簡単に止められてしまう。


「本当に脳がねえなあ、頭の悪いヤツはこうだ!」


すかさず彼は両手でゴブリンの右腕を掴むとまるで雑巾を絞るように力ずくで捻り、「メキ、メキ、ゴキャ」と不快な音と共に捻り切ってしまった。


「ぐああっっ!!」


悲痛の声を上げてたじろぐがショーエイが追撃で両脚を手刀で切断し、文字通り『達磨』のような姿で仰向けに「ドオっ」と地を揺らして倒れてしまう――。


「さあて、トドメと行きますか」


ヒイヒイ嘆いているボスゴブリンの割れた腹筋に飛び乗り、その卑しい笑みで見下すショーエイ。


「……お、お前、何者……!!」


その問いに彼は、


「俺か?そりゃあわかってんだろ?」


しゃがんで歯を剥き出し、ニヤァと狂気の笑みを見せた。


「お前の敵だよ」


ショーエイは右手刀をゴブリンの腹部に勢いよくぶっ刺し、内臓器官までめり込ませ、「ギャアア!!」と痛みを伴う悲鳴を上げた――。




【近接近戦用プラズマビーム・シリンダー、セット。エネルギー充填100%――放射!】




次の瞬間、ゴブリンの身体は真っ白に光、そして風船のように膨れ上がりそして、


「ボォン!!」


山中響くほどの破裂音と共に粉々に破裂して肉片、内臓、血液、そして大量の毒液が広範囲に渡って飛散した――。


「さあて……残りは……」


彼に視線はまだ生き残ったゴブリンに向けられ、この惨状を見ていた彼らは一転、恐怖に駆られて一斉に逃げ出すが――。


「逃がすかオラァ!!」


ゴブリンの殲滅を開始し、瞬く間にショーエイの手によって惨たらしく八つ裂きにされていった。


「ひいぃ……………」


瀕死状態のマナに寄り添うシェナは完全に修羅と化しているショーエイに得体の知れない物に対する恐怖を示していた。

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