第12話 対峙③
一方、ダガール遺跡にて。街は今とんでもないことになっていること、そしてショーエイが今そちらに向かってきていることは露知らず。ライルは彼女に尋問を続けていた。
「まあ、ショーエイについてはもう分かった。まあどうせ今ごろ殺されてるか、素直に従って今こっちに向かってくることだろうぜ」
「……信じられないなら一回会って話してみな。そして思い知るがいいさ。あいつは人としての道徳を持ち合わせていないことを、そして理屈の通じるヤツじゃないことを――」
未だにショーエイに関して信じられないライルだが未だ会ってないのだから当たり前か。
「そして二つ目に聞きたいこと……それは常闇(とこやみ)の宝玉(ぎょく)のありかについてだ」
「と、常闇の宝玉……だと……?」
緊張して張りつめたような表情をするマナ。
「常闇の宝玉は元々我々、レヴ大陸の所有物。そりゃあ返してほしいに決まってるよなあ?」
「バカな……常闇の宝玉は300年前の大陸間戦争の引き金になったと言われる禁忌の宝玉、なぜ今さら……?」
「おっと、そこはこちらの最高機密なんでね。あんたは宝玉のある場所さえ言えばいいんだ。で、どこにあるんだ?」
「……………知らん」
と、そっぽ向いて答えるマナ。
「まあそういうとは思ってたよ。サンダイアル城のどこかにあることだけは知ってるんだ、だが詳しい場所までは分からん。だから城に詳しいあんたなら知ってるだろ?」
「知らんものは知らん。あたしですらその宝玉の保管されている場所は教えられてない、諦めろ」
「ほう……ならこれはどうだ?」
ライルは右掌を上に向けると、「パチバチ!」と電気の帯びた野球ボールほどの電光球を発生させて――。
「答えねえとこうだ!」
マナの腹部に電光球を押し付けるとバリバリと言う雷にも似た轟音が鳴り響き、全身に突き抜ける強烈な電流に「ぎゃああああっ!!」と悲痛な叫びを上げた……。
「ほら、早く言わねえと全身焼け焦げて死ぬぜ?正直になったほうが楽になるぞ」
「が、だ、だから、知らないと、言っているだろう、があ…………!!」
「……………」
苦痛を味わう最中、マナは一つの確信を掴めたような気がした。それは何故レヴ大陸がアルバーナ大陸が攻めようとしているのかを――。
「ぐ、ああああああっ!!!」
こんな目に遇わせても未だに頑固に拒む彼女にライルは「ちっ」と舌打ちをする。あまり効果ないと感じたのか電光球を消すと彼女の身体からプスプスと煙が立ち込めている。
「ぐ………うう……っ」
苦しそうに呻く彼女の横で、余裕そうに振る舞っていた彼から明らかに苛立ちの表情をしている。
「おい、流石の俺もムカッとしてきたぜ。次は本気で殺すぞ」
感電させられてかなり弱っているマナだが、「ふん」とまるで脅しに屈する気はないと言わんばかりに微笑をする。
「……やはりすんなり解放する気は更々ないのは分かっていたよ。そんなに私をやりたければやればいい。だがこれだけは言っておく、お前らはどうあがこうが絶対に宝玉が手に入ることがない、絶対に……!」
「てめぇ……!」
「あたしが死んでも代わりはいくらでもいることを忘れるな……!」
激昂したライルはすかさず彼女の腹部へ肘を落として強打すると彼女は「ぐえ……!」と呻き声を上げて泡を吹いて再び気絶してしまった。
「残念だな。どの道うちの潜り込ませたスパイがサンダイアルの詳細が描かれた地図を持ち帰ってきた、こんな小細工しなくてもいずれ見つかるさ」
ライルは右掌を上に向けると今度は「ゴポゴポ」と緑色の、腐敗した沼のような如何にも毒々しい球を形成した。
「もういい、毒にまみれて死ね!」
意識のない彼女にトドメを刺そうと毒球を押し付けようとした――その時、
『……ライル、聞こえるか!』
寸でのとこで手が止まる。ライルは毒球を消して腰につけているポーチから水晶玉を取り出すとそこには仲間の一人であるクリフの姿が映し出されていた。
「なんだよ、どうした?」
『今なにしてる!?』
「今はハーヴェルから遥か西側のダガール遺跡でマナの野郎から宝玉の在りかを聞いてたとこだ、まあ全く口を割らないんで殺そうとしてたところだ」
『今すぐ戻ってこい。例の男がお前のいるところへ凄まじい速さで向かってきているぞ!』
「なんだよ好都合じゃねえか。俺の部下が連れてきてるんだろ?」
『違う、ヤツはお前の部下もろとも街を消し飛ばしたんだ!』
ライルは当然、「……は?」と声を上げる。
「なにいってんだお前……?」
『どう説明していいか分からないが……とにかくあの男は俺達の想像を絶する力を持っている。お前、あいつと会ったら間違いなく殺されるぞ!』
「へっ、そんなに強いなら寧ろどんかヤツか会ってみてえなあ」
と、警戒するどころかまるで信じていないのか闘志をむき出しにしている。
『とにかく本当にそこから早く逃げろ、さもないと確実に死ぬぞ――!』
彼の警告を無視して水晶をしまってしまうライル。冷静巾着なクリフがかなり焦っていた様子に彼も正直、動じていないと言えば嘘になる。だがそこまで言わしめる彼に対しての興味もあったのだ。
「ククっ、上等じゃねえか。そんなにスゲエ奴なら拝ませてもらおうじゃねえか!!」
「ヒァハハハハハ!」と彼の高笑いする声が静寂なこの空間にこだました――。
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