第11話 対峙②
先ほどの地震で家の窓から覗く住人、騒ぎを駆けつけ集まりつつある野次馬達。マナが恐れつつあった心配が今に現実になろうとしていた。
「拒否をしたお前には死んでもらう。このゴーレムでな?」
それはゴーレムと呼ばれる、様々な素材を用いて特殊な製法によって作られた依り代に魔力の核を埋め込まれて完成する操り人形である。
このゴーレムは凄まじく硬い鉱石で作られた『オール・ゴーレム』である。
「最後のチャンスだ、素直についてくるなら助けてやろう。もし嫌ならこいつに潰されて死ね――もっとも、もう全てを破壊するまで止められないがな」
と投げかけるも、ショーエイは……。
「今日はまじ最高だな。こんなに暴れられる日が来るなんてよ!!」
寧ろ指関節をバキバキに鳴らして嬉々の彼に男達は「本当にバカかあいつは……?」と呆れに呆れる。
「お前らに感謝するぜ、最近まともにやってなかったからムカついていたんだ」
腕をブンブン振り回して凄まじくご機嫌のショーエイにだんだんと不機嫌になる男達。
「ナメやがって……ゴーレム、やっちまえ!」
「グオアアアア!!」と重低音の雄叫びを上げてその鉱石の集合体で構成された巨大な右拳をショーエイ目掛けて振り落とすゴーレム。一方の彼もなんと右拳を握りしめ、
「一撃で粉砕してやらぁ!」
全力で向かってくる鉱石の拳目掛けて振り込んだ。拳同士ぶつかり合った瞬間、「ドゴォォオ!!」と凄まじい爆発音のような音が響き渡りなんとゴーレムの拳がショーエイの拳に負けて吹き飛んだ。
「…………は、ああ!?」
その信じられない光景を目にした男達は当然、愕然となった。
「う、ウソだろ!?相手はオール・ゴーレムなんだぞ!?」
「ただの人間なのになんだあのパンチの威力は……!」
「な、ナニもんだあいつはァ!?」
ショーエイは不敵な笑みを浮かべて、ゴーレムににじり寄る。
「いくぜ!」
するとケルベロスとの戦いで見せたように両腕を前に覆いかぶし、前屈みになるがまさかこんな街中で――。
「亜光速ミサイルで消し飛べ!」
……だが、
「…………ん?」
何も腕から発射されずシーンと静寂な空気に包まれる。なぜならミサイルがひとつも装填されてないから当たり前である。ショーエイは「あ、やべっ」とやっちまった感な顔をした。
「そういやあん時に腕のミサイルは撃ち尽くてたんだ。エル=ファイス・ジェネレーターが壊れているの忘れてたわ」
と、言ってる間になんと吹き飛ばされた右腕が再びゴーレムの肩に吸い付くように戻っていき再生されていた。
「バカめ、ゴーレムは消し飛ばさない限り完全再生するんだ」
元どおりになったゴーレムは手の平同士をあわせて巨大な手刀を如渾身で彼の脳天へ振り下ろした――だが。
「!?」
ケルベロスの時のように両手で受け止めるショーエイ。しかしその凄まじい衝撃で地面が粉砕されて足がめり込んでしまう。
「力だけは一丁前だがそれで俺は倒せんな」
ショーエイはその手刀をいなして横の地面に反らす。一瞬よろけたゴーレムに向けて両手の指を突き出すと指先全ての穴が開く――。
【拡散フィンガー・プラズマビーム砲、発射――】
10本全て指先の小口径の砲口から細長いプラズマビームを発射させてゴーレムの身体を容易く貫通し穴だらけにした。それどころか射線上の住宅にも貫通して破壊、遥か上空に突き抜けていく――。
「まだまだァ!」
辺りがワーワーと騒ぐ中、ショーエイはまだ止まらず両肘、踵、背中の計6基のブースターを展開。プラズマエネルギーを吹き出すと一気に空中に飛び上がった。
「なっ!?」
男達は目を奪われる。6基のブースターによる急制動、急発進、急旋回を駆使した空中での高速機動でゴーレムを手玉に取り撹乱しながら、蹴りとパンチだけで一方的に圧倒するショーエイに「悪い夢を見ているのか」と――しかし同時に街にも被害を及ぼし住宅の倒壊や犠牲者も出てきていた……。
「おぅるああああ!!」
雄叫びを上げながらゴーレムの頭を全力でかち殴り地面に沈める。
「これでシメだ!!」
空中で蹲るように前屈みになると腹の中心からなにやら発射口が開門、レンズのような物が現れる――そして「ギュイイイイイ!!」とレンズにプラズマエネルギーが集束していく――。
【腹部プラズマ・ブラスター、プラズマエネルギー集束開始、発射スタンバイ】
「死ねえええええええええっっ!!」
腹を突き出すと集束レンズから高出力の蒼白光線が地上へ向けて発射し地上に倒れ伏せるゴーレムに直撃……いやそれどころか着弾地点一帯が熱線と衝撃波が拡散し、近くにいた人々、ライルの部下4人、そして建物のありとあらゆる全てが一瞬で消し飛んでいった……。
◆ ◆ ◆
レヴ大陸の王都バルフレア地下。水晶でその恐るべき光景を見ていたその場の全員は案の定、絶句する。
「なんだこいつは……?」
「う、ウソでしょ………?」
「……………」
今まで見たことのない兵器のオンパレードを見せつけられて冷や汗が流れている。
「どうやら彼は私達の想像を遥かに越えるような強さを持っているようですね……」
「クリフ、早くライルにこの事を知らせないと!」
「分かってる!」
彼らもまたショーエイの恐ろしさを知ってしまう。だがまだ彼らは知らない、これですらまだ本気ではないことを。
◆ ◆ ◆
攻撃が終えると街のど真ん中に数キロの巨大なクレーターができており、一帯のほとんどが消し飛ぶ大惨事となっている。
「やっちまったなあ……まあいいか!」
一体どれだけの被害が出ているのか分からない状況だ。ショーエイは地上を降り立つとニカッとスッキリしたような満足げになっている。
「さあて、次は………」
彼は視線を向けるは遥か西側、そうマナとライルが今いるダガール遺跡だ――その時。
【プラズマ反応炉、身体の各部位の全て修復完了。メルカーヴァ・マシン・タイプ1の全武装、全機能、ビークルモードの使用制限を解除します】
アナウンスと同時に最大出力が20%から30%に上がり、ショーエイは嬉々と全速力で走り出す。
「久々にビークルでいくか!」
そして、
「チェェェンジ、ビークルモード!!!」
彼の叫びに呼応して予想だにしないことが起こる。なんと彼の身体がまさにアニメか漫画の世界に出てくるようなロボットのように「ガシュウ!」と身体が折り畳まれて変形、タイヤやウイングも飛び出してまるでスポーツカーのような流線型のシャープな車体へと姿を変えたのだ。
「ようし、待ってなマナ!」
車体後ろのブースターからプラズマエネルギーの噴射して一気に急加速で発進、時速はなんとマッハ1を叩き出しながらアルバーナ大陸を疾走、目指すはマナ達のいるダガール遺跡――。
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