不器用な天狗
◇◇◇
「おやつ、ですか……?」
白哉様との朝ご飯を食べてから御膳を返しに梅さんのところへ戻ると、食器を洗っている最中の梅さんに、あやかしたちにおやつを作ってやってほしいと頼まれた。
「あんたの料理はうまい、うまいとあいつらが食べるもんだから、すぐになくなっちまって取り合いになって困るんだよ。仕事の合間に、つまめるようなもんか、なんか作ってやってくれないかね?」
「それは、全然いいですけど……」
まさか、そんなに喜んでもらえているとは驚きだ。あやかしたちにとって、霊力がこめられた料理というのは、それだけおいしいものなのだろうか。
「今日の昼食と夕食の食材は、そこに分けておいてある。それ以外のもんは自由に使ってええし、足りんもんがあったら、畑にでも取りに行ったらええから」
「は、はい!」
こうして思いがけず梅さんにおやつ作りの任を与えられた私。早速、何を作ろうかと悩んだところで「あ、そうだ」と名案を思い付く。
「ねえ、鈴影さん。そこにいるんでしょう?」
頭上に向かって声をかけると、どこからともなく天狗の鈴影さんが現れた。さすがは護衛係。見えないところでも、きっちり警護してくれていたのね。
「……何の用だ」
鋭い目と、低い声、不愛想な態度は相変わらず。だけど、私はそれを気にせず「聞きたいことがあるんだけど」と続けた。
「聞きたいこと……?」
眉間にシワを寄せ怪訝な表情を浮かべる彼に、にっこりと笑った私は「ええ」と返す。
「鈴影さんの好きな甘味って何かしら?今日のおやつは、あなたの好きなものを作ってあげるわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます