不器用な天狗

「こいつらは、鉄鼠といってネズミのあやかしです。小回りがきくので、諜報や屋敷警護の仕事を担当しています」

「へぇ〜、そうなんだ」


琥珀君はネズミたちの説明をすると、目線の低い彼らと目を合わすためしゃがみこむ。「この前は、ごめんな」と謝る青年と、「仕方ないでちゅね、許してあげるでちゅ」と返す小さなネズミたちの構図はなかなか見られるものではないだろう。なんだか和む……。


「それはそうと、琥珀さんの上司の鈴影さん!最近、ピリピリしていて怖いので、そっちをなんとかしてほしいでちゅ!」

「この間なんて、束の間の休憩時間に庭でお茶会をしていたら『邪魔だ』って蛇のように睨まれたんでちゅよ〜!」

「あの目つきの悪さ、なんとかならないでちゅか⁈あんな怖い顔してたら、誰も寄り付かなくなるでちゅよ!」


ネズミたちは3匹で肩を寄せ合い、かたまりながら琥珀君に訴えた。確かに、鈴影さんは目つきが悪くてちょっと怖いけれど……。言いたい放題ね、この子たち。本人の耳にでも入ったら、どうするのだろう……と私が心配になっていると、案の定──。


「おい」


後ろから聞こえてきた、地を這うような低い声。声の主が誰だか一瞬で理解し、その場にいた全員の体が凍りついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る