不器用な天狗
「そんなことより、この前の昼飯のお味噌汁、あやめさんが作ってくれたんですってね。あれ、めちゃくちゃおいしかったです!」
突然の話題転換に、目をぱちぱちさせながらも、料理を褒めてもらえたことは純粋に嬉しく「ありがとう」と返す。
「なんか、食べるとこうグーっと力が湧いてくる感じで。俺なんか3杯もおかわりしちゃいました」
「琥珀君、育ち盛りっぽいものね。白哉様から聞いたけど、人間の私が作るからか、霊力がこもっているとかなんとか」
「そうなんですよ……!だから、元気が出るっていうか。もちろん、いつも梅さんが作ってくれる味噌汁もうまいんですけどね」
なんだか彼を見ていると大型犬のように思えてきた。にこにこしながらそう話す背中に、見えない尻尾が浮かび上がってくるような……。天狗だけど。
「琥珀さんだけ、ずるいでちゅ!僕らは食べられなかったんでちゅよ!」
と、そのとき、どこからともなくかわいらしい声が聞こえてきてキョロキョロする私。
「え、だ、誰⁈」
「ああ、下です。足元」
琥珀君の言葉に視線を下げると、そこにいたのは「忍」という文字が描かれた忍者装束のような服を身に纏った小さなネズミが3匹。腰に手を当ててふんぞりかえるように立っていた。
「ネズミ……?」
「失礼でちゅね!ただのネズミじゃなく、情報収集を得意とするこの屋敷の諜報部員でちゅよ!」
ほかのネズミたちも「そうでちゅ、そうでちゅ!」と抗議してくるけれど、手のひらに乗るくらいの大きさのネズミたちに威張られても全く怖くなかった。むしろ、かわいい。諜報部員ならあまり目立っちゃいけないだろうに、「忍」とデカデカと描かれている服を着ているあたりとかも。
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