居場所
「もう、わざとやってるでしょう!」
私が声をあげると、白哉様は「ふふ」と品よく笑いながら謝ってくる。
「すまない、顔を真っ赤にする君がかわいかったから、つい」
全然「すまない」感が伝わってこない謝罪である。一目惚れと言っていたけれど、彼がどうして私にこのような態度を取るのか、まったく理解できない。助けてくれたことには感謝しないけど、本当に彼は人間である私を花嫁にするつもりなのだろうか。
「そんな顔をしないでおくれ。ほら、お腹が空くだろうと思って梅に作らせたおかゆも持ってきたから」
私があまりにジト目で見すぎたせいか、白哉様は少し慌てた様子でそう言って隣に置いていたらしいお盆を差し出してきた。お盆の上には一人用の黒い土鍋に、れんげと器。白哉様が土鍋の蓋を開ければ、ほかほかと白い湯気が立つおかゆが現れた。
「あ、玉子のおかゆ……」
とろとろのおかゆの上には、玉子と刻んだネギが乗せられていて、とっても美味しそう。寝る前は食欲のなかった私だけれど、匂いにつられた私のお腹が「ぐう」と、はしたなく鳴ってしまい恥ずかしくなる。
「ほら、お食べ」
白哉様はあえて、そこは気づかないふりをしてくれたのか、私におかゆをよそった器を差し出してくれた。それから、ここはお言葉に甘えて、とれんげを受け取ろうとしたものの、白哉様はにっこり笑うだけ。れんげを渡してくれないことに、私が首を傾げていると「僕が食べさせてあげようか?」だなんて、キラキラと眩しい顔をむけてそう言ってきた。
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