居場所
疲れ果てていた私だったけれど、「ちゃきちゃき働きな!」という梅さんの言葉にお尻を叩かれ、料理に取り掛かる。実は家事の中でも料理は好きな方。お父様や仙が、いつも私の作った料理をおいしそうに食べてくれるから、それが嬉しくて、いつの間にか料理の腕も上達したのだ。
梅さんに言われた通り、まずはお味噌汁に入れる具材を切っていく。今回はニンジンに大根、しめじ、豆腐、青ネギという組み合わせ。野菜たっぷりのお味噌汁とは、ご飯とよく合いそうで美味しいだろうな。
そのあとは、あらかじめ下味つけて漬けておいた鶏肉に片栗粉をまぶして油で揚げていく。そう、今日の昼食は唐揚げ定食。私が揚げ物をしている隣では、梅さんが調理場の机に並んだお皿にせっせとサラダと副菜を盛り付けているところだった。お皿の数は20枚ほど。この屋敷には、結構な数の住人がいるみたい。
料理をしながら考えるのは、仙のことだった。
理由はどうであれ、私は邪鬼に喰い殺されるのを免れて、今はこうしてこの屋敷に身を置かせてもらっている。周りには神様と、その眷属であるあやかしたちしかおらず、大罪人というレッテルを貼られた私を責める人など誰もいない。もちろん、あやかしたち皆が皆、人間である私に好意的ではないけれど……。
「……仙は、どうしてるかしら」
何より、それが気がかりで心配だった。
「あつっ……!」
ぼんやりしていたら、しっかりしろと言わんばかりに油がピッと跳ねた。ハッとした私は、唐揚げが焦げてしまわないように、菜箸で鶏肉を返していく。
仙のことに関しては、今はただ白哉様からの連絡を待つほかない。どうか無事でいますようにと、そんな願いを込めながら私はひたすら唐揚げ作りに専念したのだった。
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