居場所

「あの天狗男、これ絶対に私への嫌がらせよね……!」


あれから私は、たすきをかけて髪を結い、ひらすら薪を割る作業に専念していた。だけど、やってもやっても数が減らない薪割りに、さすがに体も疲れてきて、ぜぇはぁと言いながら近くにあった丸太に腰掛ける。


「人間が嫌い」と言っていたあやかしから、早速洗礼を受けてしまった。確かに、何か手伝いたいと言い出したのは私だったけれど、初っ端からこんな重労働を任されるとは。軽い気持ちで「仕事を〜」と言っていた自分を殴ってやりたい気分だ。


「……まあ、そりゃ仕方ないだろうけどさ」


この屋敷の中で、私ひとりが部外者なんだから。はあ、と大きなため息がつきながら、がくりと項垂れる。


「おい、アンタ!こんなところで、何サボってるんだい!」


ぐたりとしていた私の耳に、そんな叱咤が聞こえてくる。顔を上げると、梅さんが腰に手を当てて私のことを見下ろしていた。


「す、すみません……。こんなに量が多いとは思わなくて……」

「これっきしで根を上げるとは根性がない娘だねぇ。仕事なら、山のようにあるんだよ!さあ、次は調理場へ来て食事の準備を手伝っておくれ!」


疲れ果ててぐったりとしている私が見えていないのか、梅さんはそう言って調理場の方へと行ってしまう。う、嘘でしょ……。もうかなり疲労困憊なのに。


「もうすぐ昼飯どきだから、屋敷内で働くあやかしたちが集まってくる頃だ。ちんたらしてないで、さっさとやっちまうよ!」


くるりと振り返った梅さんに、そんな言葉を投げかけられ、私は姿勢を正して「はいっ!」と応えた。次は昼ごはんの準備らしい。私は重い体を引っ張って、次に課せられた任務へと向かうことにした。

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