居場所

◇◇◇


「アンタがあやめかい?随分と、弱そうな女子おなごだねぇ」


天狗男に案内されたのは、白い湯気がもくもくと湧き立つ調理場だった。大きなかまどに、壁際に積み上げられた薪、大きさがバラバラの器や桶など、料理に使うと思われる道具や材料があちこちにある。


そんな調理場でせっせと料理をしていたのが、この「梅さん」と呼ばれるお婆さん。腰は曲がっていて、顔はシワだらけ。いかにも、という風貌のお婆さんである。「弱そう」との言葉に、私は苦笑した。


「初めまして、水無月あやめと申します。何かお手伝いしたいと思って、こちらに案内してもらったのですが……」


そう言いながら、ちらりと後ろを見たのだが、私をここへ連れてきた天狗男はいつの間にかいなくなっていた。「え?どこ行ったの⁈」と、私が驚いていると、「あいつは忍だから、また元の位置に戻ったんだろ」と、梅さんは気にしていない様子。どうやら、こういったことはよくあるみたい。


「して、アンタはあたしの手伝いに来たと」

「はい、鈴影……さんが、それならと案内してくれて」


私の言葉に、梅さんは腕組みをして下から上まで何かを見定めるように私を見つめた。緊張で体が固まる私。それから、ううんと唸りながらこちらを見つめていた梅さんだけど、「そうだねぇ」と呟くと、部屋の外を指差した。


「じゃあ、とりあえず外にある薪割っといてくれるかね!」

「は、はい!」


なんてことはない、簡単なことだと言わんばかりの梅さんに「分かりました!」と私が威勢よく外に出てみると、そこにあったのは山のように積み上げられた木材。安易に引き受けた自分に後悔したが、すべては後の祭りのことだった。

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