居場所
障子を開けると、そこには広大な庭園が広がっていた。青々と茂る松や紅葉の木、鯉が悠々と泳ぐ池。屋敷の建物も、こうやって見てみるとかなり大きくて驚いた。
「こんなに大きなお屋敷だったのね……」
さすが神様。なんだか白哉様は、のほほんとしていて想像していた神様とは随分と違うけれど、帝都を守る四神の一人というだけはある大豪邸だった。
「まずは、雅さんを探そうかしら」
きょろきょろと周りを見渡し、ひとまず右の方に行ってみるか、と足を踏み出した。そのとき──。
「おい、女。どこに行きやがるつもりだ」
ふいに聞こえてきた低い声に、ぴたりと足が止まってしまった。だって、声はしたのに姿が見えない。「え?なに今の」と、あちこちに視線を巡らせてみるも、やっぱりどこにも誰もいなかった。
「……空耳かな」
首を傾げつつ、また歩き出そうとした私。そんな私の目の前に、突然シュタッと華麗に着地した男がいた。両肩にフサフサとした羽のような飾りがついた服装を着ており、その背中には大きな黒い翼がある。とっさに「キャア!」と悲鳴を上げながら後ずさると、切れ長の鋭い瞳にキッと睨みつけられた。
「あ、あなた誰……⁈」
ビクビクと震える私に、男は立ち上がると腕組みをしながら偉そうな顔でこちらを見つめてくる。
「俺は当面、お前の護衛を任されている天狗の
あからさまに疑うような目を向けられる。どうやら彼は私のことをよく思っていないのか、トゲトゲした態度で私に接してくる。特に、何かをしたわけではないのに、初対面で何なのかしら。
「ずっと部屋で寝たきりっていうわけにもいかないと思って……。ひとまず、雅さんを探して私に手伝えることがないか聞こうとしていたんですけど……」
私の言葉に、鈴影という天狗は眉間にシワを寄せて見つめてくる。
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