居場所
◇◇◇
「ん……」
ぼんやりとする意識の中、ゆっくりと目を開け高羽。障子の向こうからチュンチュンと雀の鳴き声が聞こえてくる。なんてことはない平和な朝の訪れに、私の頭は次第に覚醒していった。
白虎の神様だという白哉様の屋敷に来て、早数日目。ここ数日はほとんどの時間を、私はこの部屋で寝て過ごすこととなった。体がまだ本調子ではなく、あまり動くこともできなかったのだ。何よりあんな出来事があった後ということもあり夢見も悪く、憂うつな気分になることが多かった。
だけど、十分に睡眠時間を設けたことがよかったのか、今日は昨日とは違ってなんだか体も幾分軽かった。
体を起こして伸びをしたあと、ふと枕元を見ると着替えと思わしき着物が折りたたまれて置いてある。薄紅色に、小花が散らしてあるかわいい着物。ひとまず、私はそれに袖を通して身支度をすることにした。
先日、私を取り巻く状況について白哉様から説明を受けたばかりだけど、私にはこの屋敷についてまだまだ知らないことがある。
体が無事だと分かった今、いつまでもメソメソと塞ぎこんでいてばかりいても事態は何も変わらない。
ひとまず、今の私にできることはこの屋敷を知ることから。白哉様のこと、この屋敷にいるあやかしたちのこと。未知の世界に放り込まれた私にできることといえば、まずは彼らを知ることくらい。部屋に備えられた鏡台の前で、パンッと両頬を叩いて気合いを入れると、私は思い切って部屋の外に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます