白虎の神様
「にっこり」と文字がつきそうなくらい眩しい笑顔に、「は?」と間抜けな返事をする私。
だけど、頭の中が混乱状態の私をよそに、白哉様は「はあ、言わないつもりだったのに〜……」だとか、なんとか言って顔を両手で覆っている。
「なんですか、その理由……」
と、拍子抜けする私。
「なんですかとは失礼だな。たまたま結界の近くを散歩していたら、ちょうどあやめを見つけてね。君を見た瞬間、僕の胸にこう、ビビッと来たんだよ」
今度は胸を抑えながら頬を染める色男に、呆然とする私。だって、そんな明るい感じで胸の内を告白されても反応に困る。私の隣にいる雅さんも、黙ったままその様子を見つめている。けれど──。
「……仕方ないだろう。心とは、頭ではどうにもならぬものなのだから」
ひどく優しい瞳を向けながら、そう呟く白哉様に、どうしてか私の胸がキュッと締め付けられた。
それは、向けられた瞳があまりに優しかったからだろうか。それとも、流れるように心地よい、その声色のせいなのか。その表情と言葉と声が、なぜだか私の頭から離れなかった。
「まあ、あやめも目覚めたばかりで、まだ休養が必要だろう。今日からここが君の家だ、ゆっくりするといい」
押し黙る私に腕組みをしながら、にこりとそう告げた白哉様。だけど、ハッとした私は彼に詰め寄った。
「ここが私の家って……私は、元いた場所には帰ることはできないの⁈」
私の問いかけに、白哉様は表情を引き締めた。
「……残念ながら、それはできない。ここには特殊な結界が張られていて、人間が簡単に出入りすることはできないからね。それに──」
白哉様はそこで言葉を区切ると、私の目をまっすぐと見てこう言った。
「大罪人のレッテルを貼られ追放されたあの場所に、君の居場所なんてあるのかい?」
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