白虎の神様

「な、なんですか」

「……知りたいかい?僕が君を花嫁に選んだ理由を」


妖しく微笑む目の前の男に、きっと私の頬はじわじわと赤くなっていることだろう。逃さないと言わんばかりの瞳に捕まり、目が逸らせない。そんな私に気づいてか、彼はさらに距離を詰めてきた。


「知りたいから聞いてるんですけど……!」


睨みつけるようにそう尋ねたのに、美麗な神様は今度はクスクスと品よく笑っていた。そして私の長い髪を一束取り、目線を逸らさぬままじっと見つめると、あろうことかそこにそっと口付けた。途端に、体が固まる私。


「もう、白哉様。お戯れはそれくらいに。あやめが困ってますよ」


呆れたようにそう声をかけ、私に助け舟を出してくれたのは雅さんだった。私はとっさに彼女の後ろに隠れて、距離を取る。


「悪かったよ、あやめ。君がかわいい反応を見せるものだから、つい」


まるで反省していないみたいな顔をして、アハハと楽しげに笑いながら、そんなことを言う神様。


だけど、いつまで経っても私が警戒を解かないので、「分かった、分かった」とようやく理由を話す気になったくれたようだ。ゴホンと咳払いをし、改まった様子で私に向き直るので、私も姿勢を正して彼を見る。そして、一言。


「僕があやめを花嫁に選んだのは、君に一目惚れしたからだよ」

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