白虎の神様

その言葉に、どくりと音を立てる胸。


「花嫁って……」


呆然とする私に雅さんは、まるで同情するみたいな顔で苦笑した。


「まあ、驚くのも無理ないわよね。突然、あやかしまみれの場所に連れて来られて、花嫁に選ばれただなんて、そんなこと言われたら私だって頭が混乱すると思うわ〜」


彼女の言葉をまだ飲み込めずに、ただこくんと頷くしかできない私。だって、訳がわからないわ。


「無実の私を救ってくれたことには感謝しますけど、どうして人間である私が、花嫁に選ばれたんですか?ましてや、その白哉様とやらは四神という高位な神様なのでしょう……!」


混乱した私は思わず雅さんに詰め寄った。「どうどう」と、雅さんにはなぜか動物にやるみたいに宥められたけれど、どれも私の常識からかけ離れたことばかりで理解が追いつかない。


と、そのとき──。


「それは僕の口から答えてあげようか、あやめ」


部屋の障子が突然開かれたかと思うと、そこに現れたのは白銀の長い髪をひとまとめにした麗しき人。口元はにこりと弧を描き、吸い込まれるような黄金の美しい瞳が私のことをじっと見つめていた。

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