白虎の神様

「まず、説明しておくと、あなたたち人間がいう『裁きの森』は、大罪を犯した人間の審判を神に委ねる追放の場所だと言われているけれど、実際には周辺に張られている結界に引っかかった侵入者たちを邪鬼が排除しているに過ぎないわ。この森に迷い込んだ者は、もれなく邪鬼によって喰い殺される……。それを人間たちが勝手に『裁きの森』だなんて言い回っているだけ、というのがあの森よ。特に、人間の行いに四神の神々が関わっているわけじゃないわ」


神妙な面持ちで、そう語る雅さん。


「じゃあ、だとしたら私は……」

「普通なら、あの場で邪鬼に喰い殺されていたでしょうね」


そのことを想像すると、ぶるりと身震いして自分の体をギュッと抱きしめる。


「でも、あんたはそれを回避して、この屋敷……白哉様がお守りするこの西殿へと連れて来られた。まあ、邪鬼には食べらず、命拾いしたってわけ」


白哉様……さっきも狛犬兄弟の話に出てきた、確か「白虎の神様」とかいう。


「どうして、私はその白哉様というお方に助けられたんですか……」


不思議に思ってそう尋ねた私に、雅さんはどこか切なげに笑ってこう言った。


「……無実の罪を着せられたあんたを白哉様が助けてくれたから。その対価として、あんたは白哉様の花嫁に選ばれたのよ」

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