嘘の罪

「いいわ、約束してあげる」


にこりと微笑む椿に、私は「約束は必ず守ってもらうわよ」と睨みつけた。


「そんな怖い顔なさらなくとも、私だって仙様のことは大切に想っていますもの。悪いようにはしませんわ」


愉悦に入っている椿の言葉に、鉄棒をギュッと握りしめる。力のない私にできることは限られている。ならば、今一番優先すべきは、仙を守ることしかない。


「……もし万が一にも約束を守るようなことがあれば、あんたを呪ってやるから」


せめてもの強がりで、そんなことを言ってみたけれど、圧倒的に優位な場所に立っている椿には、痛くも痒くもなさそうだった。虫唾が走る猫なで声で、「あら、楽しみ」と笑われただけだった。


追い込まれてしまった私には、それ以上、虚勢を張って彼女と言葉を応酬を繰り広げることも、「卑怯者」と罵る力も持ち合わせていなかった。


この状況で、最善の選択をする。いまの私にとって、それは「仙を守ること」だった。


「裁きの場では、きちんと証言してくださいね。……を。次にお会いするときを楽しみにしていますわ」


椿はそう言って笑うと、部屋から出ていってしまった。静かになった地下牢の中には、私一人だけ。どうしようもない無力感だけが胸のうちに残り、私は手のひらをギュッと握りしめ、うなだれた。

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