嘘の罪
私がそう尋ねると、牢の向こうから手が伸びてきて、目を合わせさせられる。
「罪を認めて、おとなしく『裁きの森』へと追放されてちょうだい」
「罪を、認める……?」
「ええ。私と些細なことでケンカをして、つい口論になり行商が持ってきた品の中にあった包丁を手に取って刺してしまいました、と」
「そんな理由で私が人を刺すなんて、信じない人もいると思うけど」
私の言葉に、椿はやっぱり余裕たっぷりの笑顔を浮かべたままだった。そして、ぐいと私に顔を近づけると「わかってませんわね、お姉様」と言い放つ。
「事実か、どうかなんてどうでもいいんです。あなたの口から、そういう言葉が出ることが大事なんですよ。さっきも言ったように、民衆はスキャンダラスな話題であれば、事実がどうであれ面白がって飛びつく生き物なんですから」
愉快そうに笑う目の前の女が、ただただ腹立たしかった。かつては、私の後ろに隠れて恥ずかしそうにしていたような子だったのに、いまの彼女にはその面影も見当たらない。
「……ひとつ、条件があるわ」
そう言って、私は椿をきっと睨みつけた。
「なんですか」
「……仙にだけは何もしないでちょうだい。今すぐ仙を解放して。罪を被るのは私一人だけ。それが、私が求める条件よ」
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