嘘の罪
「ち、違うわ!私、気づいたらここで眠っていて──」
状況を説明しようにも、医者の男が「すぐに、その娘を捕まえろ!」と言うと、どかどかと男たちが部屋へと入り込んできて拘束される。
「離して!私は、何もしていないわ!」
「うるさい、大人しくしろ!」
数人に腕を掴まれ、畳の上に顔を押し付けられる。その瞬間、うっすらと目を開けた椿と目が合った。その口元は、にやりと弧を描いていて私は目を見開いた。
『あやめお姉様、ごめんなさい。……私、あなたのすべてを手に入れたいの』
その瞬間、唐突に頭の中に流れ込んできた記憶。思い出した言葉と、意地悪く微笑む椿の顔が蘇った。
「まさか、椿……。あなた……」
頭に浮かんだ考えに寒気が走った。
けれど、椿が「痛い……っ!」と大きな声でうめくものだから、周囲は「椿お嬢様、大丈夫ですか⁈」と私を押しのけ彼女を取り囲んだ。私はというと、数人の男たちに体を取り押さえられていて身動きが取れない。
「離して!」
そう何度も言うけれど、ついには「大人しくしろ!」と頬を叩かれ、再び畳に顔を押し付けられる。何がなんだか、私にも状況がわからなくて涙が溢れた。胸が苦しく、体も痛い。
この場所に私の味方なんて一人もおらず、いくら抗議の声を上げても、誰も私の話を聞いてくれる人はいなかった。ただされるがままに捕らえられ、抵抗することすら許されなかったのだった。
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