VTuberってこんなんかもしれない(2)

「ここどこ?」

私は村の近くから鹿を追いかけていたのだ、なのに鹿を仕留めて村に帰ったつもりが何やら黒い岩でできた道のようなところに出てきたのだ。もちろんこんな道村までの間にはなかった。

途中の森の中も見覚えなかったし方向を間違えた?そんなことを思っていると、道の向こうから唸り声のようなものが聞こえてきた。なにか危険な野生動物かもしれないと咄嗟に森の中に隠れ様子を見てると、真っ黒い人型のものが2つの車輪が付いてるものにまたがって目の前をすごいスピードで通り抜けて行った。しかも10を超える群れだ。息を潜め通り過ぎるのを待っていると、突然後ろから声が聞こえた。

びっくりして振り返るとそこには鼻の長い人間が立っていた。


「________________」

なにか喋ってるようだがなんと言ってるのかは全く聞き取れない。が、何種類かの言語で話しかけてきてるようだ。

「なんて、言ってるか、分からない!」

こちらを害する意志も無さそうだったから身振り手振りを混じえて話してみた。そうしたら少し考えて板のようなものを少し操作し違う声で、しかし今度は意味のわかる言葉で話しかけてきた。

「この言葉は通じますか?」

びっくりしたが、とりあえず頷くと、その板を操作しながら色んなことを話し始めた。

鼻長さんの話をまとめると、

ここは私がいた世界とは別の世界で、鼻長さんもこことは別の世界から来た人らしい。

鼻長さんが所属してるグループは別の世界から来た人を元の世界に戻す研究を続けながら別の世界から来た人を保護してこの世界に馴染むお手伝いもしてるらしい。

そして、私もそこで保護してくれるそうだ。

正直怪しいかもと思ったが、鼻長さんの言うことが本当なら1人で生きていくのは難しそうだからついて行くことにした。


それからは鼻長さん(てんぐらしい)について行った施設の中で数ヶ月かけて色んなことをした。この地域の言語(日本語というらしい)であったり知らないとまずい文化や一般常識、そして長年の研究の成果である人族に化ける技術(この世界では人族以外の人間はいないらしい)などを学んだ。


そして、数ヶ月後ある程度日本語を話せるようになった頃にてんぐさんにVTuberをやらないかと言われた。この施設で保護しているまだ自立できてない人だったり自立が難しい種族のために色んな事業をしていてそのひとつにVTuberもあるらしい。実際のVTuberだとしょきひようも掛かり、成功するかも分からないが、この施設のVTuber事業(アニライフというらしい)はどうがを少し絵に見えるような加工をすればそのまま配信できて、他のVTuberとはそのクオリティでさべつかできるから安定して儲けれるらしい。何を言ってるか意味がわからないけどお世話になったここを助けれるのなら、とやってみることにした。


そして初配信の日、緊張してるけど、かめらの後ろにいるてんぐさんの顔を見て落ち着き配信を始めた。


「は、初めまして!アニライフからデビューすることになった___ _____です!キンチョーしてるので優しい心で見てください!」


オドオドした感じになって、緊張するって何度も言ってしまって、てんぐさんから自己紹介!と書かれた紙を見せられ次に進んだ。


「私は鬼の国から来た青鬼です!最近来たばかりで日本語を勉強しながらだから言葉がおかしいかもしれないけど許してください!」


てんぐさんにはこの世界に馴染むことも必要だけど、VTuberには人族以外を演じている人が沢山いるから、ここではほぼ素でいても視聴者がいいように解釈してくれるから大丈夫だよ、と言われたからありのままの自己紹介をしていく。


「身長は250cmで年齢は200歳です!」



そんな感じで好きな食べ物やゲーム、どんな配信をしていくかなどを話した後に視聴者さんから来た質問に答える質問コーナーになった。


「さいしょのしつもん!えーと『身長250もあったら普段の生活で大変じゃない?』すっごく大変ですよー!今住んでる家は私専用設計だからそんなことは無いけど、その前に住んでたとこだと天井に何ヶ所も穴開けたりしたし、……戸があるとこの少し低いとこ?あそこをくぐる時にしゃがまないといけなかったりで、今の家になって本当に助かりましたーえ?『外に出ると目立たないか?』そうなんですよーだから外には出てなくて、つうはん?っていう四角い板をつかって荷物運んでもらったり、どうしても外出が必要な時は頑張って人間に化けるんですよ!こっちに来てから練習し始めたからまだそんなに長い時間できないですけど…『化けるのはたぬきでは?』たぬきじゃなくても人間に化けることはできます!」


てんぐさんは私が話してることを思い出してるのか笑ったり苦笑いしたり、つうはんの話をした時は少し「あっ」とした顔をしたり表情が変わって面白かった。


「『200歳ってことは江戸時代から生きてるってこと?その頃の日本てどんなだった?』江戸時代ってなんですか?こっちに来たのは最近だから昔のことは分からないんですよー。あ!『200歳はおばさん』!?失礼なこと言いますね!鬼の寿命は人間の10倍くらいあるから人間年齢だとまだ20にもなってないんですよ!」


話しているうちに、緊張してたけど、てんぐさんと、視聴者さんといううごく文字と話すだけじゃんと気づいて緊張もすっかりなくなり最後の方は元気に配信できた。てんぐさんが言うには、これからこの世界のことを勉強しながら、自分らしさは出しつつ少しづつ人間味を出していかないといけないのが大変らしい。

でも私は違う人になりきるというのがすごく面白そうで、これからの配信がすごく楽しみだ。

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