#58【クロリロ】フロルさんが激ムズチャレンジを始めることができるまで三週間かかりました【月雪フロル / 電脳ファンタジア】
最初に言い訳をしておくなら、今月は本当に忙しかった。同期コラボ二回をはじめとしてクイファンの収録、20万人の歌枠から歌ってみた一度目の投稿と二度目の収録、イミアリへの加入にリリりの準備と収録。決めることも練習も多かったし、コラボも何度かあった。ついでに裏でやることも多かった。
それにそもそも、年内は登校もある私は元から活動を加速させるのは年明けからと決めていたし、来月までは限界があることはもちろん前提だった。
とはいえね。手をつけてから三週間、挑戦を決めてからは四週間もかかるとはね。
「というわけで今回からはいよいよ『宙渡りの回廊』をやっていきますよー」
〈ついに来たか〉
〈とんでもねえ、待ってたんだ〉
〈忙しかったんやろなぁ……〉
〈過労で倒れたりしないようにね〉
もっとも、『クロノーシス・リローデッド』をやるのはこれで五回目だ。マリエル先輩が乱入してきた回とその次でエンディングまでクリアして、三回目と四回目でクリア後ストーリーで裏ボスを倒して真エンディングを見つつエンドコンテンツの解放条件を満たした。巷では「人間には理解が追いつかない配信」とか「RTA走者にドン引きされた走り」とか言われたらしいけど、心外である。
今日はまず件の『宙渡りの回廊』を縛りなしで攻略しつつ、攻略のコツや合成縛りのときの注意点を洗い出していくつもりだ。
「まあ、縛りなしクリアまでなら頑張ればできるんですよ」
『何言ってるんですかこの子』
『わからん』
「ジャンル違いだけど、そこまではマ○ター・オブ・ギャ○クシーよりはキツいくらいの難しさで済むからね」
『デュエ兄が三時間血反吐を吐き続けたステージじゃなかったかな、それは』
『むしろオマケとはいえラストシーンを見るのにそこまで要求する鬼畜ゲーという印象が強まりましたよ』
〈おっ今回はゲストありか〉
〈さすがに腰を据えてやる気あるんですね〉
〈アレ並み!?〉
〈うっ頭が〉
〈かなり気軽に空いてる同期が遊びに来る四期生てぇてぇ〉
〈ここまでは腰据えてやってなかったのかよ〉
「ローグライクはトライアンドエラーが基本ですからね」
〈??????〉
〈※ここまでノーデス〉
〈じゃあフロルは基本ができてねーじゃねーか!?〉
〈ここまでひとつもエラーしてない人に言われてもなあ〉
以前から四期生は本当に、オープンに仲がいいんだけど、最近になっていよいよお互いの配信に理由もなく出没するようになり始めた。いずれ入ってくるであろうPROGRESSの子がちゃんと馴染めるかちょっと心配になってきたけど……裏で通話をしていたときに言われていた「それを配信したら?」が事実上叶えられた格好だ。
そうしてどんどん遠慮が消えつつある四期生だけど、私は今のところあまり押しかける側はできていない。それは仕方ないということで、作業中のアンリさんとちよりんをガヤとして迎えたのが今回というわけ。
ちなみに、何も本当にノーエラーというわけではない。クロリロは通過済みだったから、過去のプレイ時にエラーは済ませてあるだけなのだ。問題の『宙渡りの回廊』以外のエンドコンテンツはクリア後ストーリーにも絡まないから今回はスルーしているし。
さっそくやっていこう。
「まずは仕様のおさらいをしておきましょうか」
『宙渡りの回廊』はいわゆる「もっと不思議のダンジョン」だ。その文化に倣って、特有の要素をいくつか含む。
まず最初に、ダンジョンに突入した時点で一時的にレベル1に戻って、強制的にアイテムと所持金が倉庫へ送られる。完全無強化の一番弱い状態で始まって、一から強化をしつつ進んでいく必要がある。この影響としてレベルアップで習得する便利効果も使えなくなって、特に厳しい要素として罠の発見が難しくなっている。
次に、仲間を連れていくことができない。このゲームでは基本的に常に相棒と共に戦うようになっていて、特にクリア後の相棒は便利な分析能力を持っているんだけど、その力を借りることができない。
一方でクリア後ダンジョンで出現する“
「そしてその上で、これが99階あります」
『……地獄ですか?』
「ところがどっこい、ここまでのほとんどの要素は類似タイトルで共通してあるんだよね」
ここまででも充分すぎるくらい一般層お断りの難易度はしているんだけど、とはいえここまでは真新しい要素というわけではない。いわゆる不思議のダンジョン系のタイトルではもはや当たり前に存在する最後の関門で、実際このジャンルの上級者なら試行回数さえ稼げば慣れでクリアできる塩梅になっている。もちろん中にはやりすぎてその範疇から外れたものもあるけど。
というわけで、この宙渡りの回廊も上手くやれば運か試行回数でどうにかなるダンジョンになっている。ここ特有の立ち回りが必要になるから、ここ専用の慣れや知識は必要になるんだけど。
『今は何をしているんですか?』
「地盤固め。最序盤は敵が弱い……というか少し進むと一気に強くなるから、今のうちにリソースの許す限り探索して強化しておかないと詰むんだよね」
『そうか、レベル1に戻っているんだったね』
〈なんかちょっと安心してる〉
〈よかった、さすがにフロルでもここは正攻法なんだな〉
〈フロルならいきなり変なことやり出してもおかしくないと思ってた〉
さすがに無理だよ、このあたりで小細工は使いようがない。仮にもターン制バトルである以上、レベル負けしすぎるととてもじゃないけどどうしようもなくなるから。
レベル1の主人公がまともに殴り勝てるのはそれこそ1階の敵くらいだから、降りる前にある程度レベルを上げておきたい。階段を見つけても一旦スルーしてマッピングを続けて、全域を探索しつつ経験値とアイテムを集めていく。
「クロリロでは同じダンジョンなら落ちているアイテムの種類や確率はどの階層でも同じになっていて、それはここでも例外ではありません。なのでアイテム収集は動きやすいフロアでやっておきましょう」
『動きに無駄がないな……踏む床も最低限に留めている』
「罠がどこにあるかわからないからね。細かいところも気をつけないとクリア率が下がっちゃう」
アイテムの有無は部屋に一歩入った時点でミニマップでわかるから、何もない部屋はなるべく最短距離で抜ける。眠っている敵は経験値効率が美味しい種類だけ起こして、不味いものは早めに見かけたらなるべく逃げ。そうして見落としがないことを確認してから降りる。
パンと初期装備と分析の巻物、それからとあるひとつのアイテム以外の中身はまだわからないけど、アイテムの集まりはまずまずだ。
最序盤はそれを繰り返して、5階に到達。ここがひとつめの転換点だ。
「次の階からめんどくさい敵が出始めるので、分析の書が拾えていたらここで使います」
『やはりそのような攻略法は確立されているのですね』
「どの敵が何階から何階まで出る、という情報は出揃ってるから、それを見越した行動は生存力を露骨に上げるの。……っと、《壁抜けの書》熱いですね、《銀の首飾り》も持ってるのでかなり運がいいです」
〈ゾンビ……〉
〈アイツはなぁ〉
〈出てくるの早すぎるんよ〉
〈おお〉
〈強〉
〈いいじゃん!〉
〈やっぱ持ってるわフロル〉
階段を降りたらいきなり敵の目の前、なんてこともダンジョンではよくあること。基本的に準備行動は必要になる前の階の階段前で行うのが鉄則だ。強制的に一階下へ送られる罠の《落とし穴》こそ怖いけど、一度に手持ちのアイテム全てを識別して安心して使えるようになる分析の書は余るほどは手に入らない。
使ってみると、ここまでの成果はなかなかのものだった。各種回復アイテムも揃っているし、危機回避用のものもある程度持てている。何より目を引いたのは読んだ階で壁をすり抜けて動けるようになる《壁抜けの書》と、アクセサリーの素材になる《銀の首飾り》だった。
この二つは《合成箱》に入れて10歩足踏み。一個につき三回ある箱の使用回数が減って、中からは《壁抜けの首飾り》が出てきた。これはさっそく装備して、それ以外の部位も手持ちで整えてから降りる。
「……そうそう、こいつです。この《ゾンビ》がとにかく面倒なので、何かしら有効なアイテムを5階までに手に入れたいんですよね」
『ゾンビ……確か、触れた武器を劣化させるのでしたか』
「うん、具体的には期待値で10倍損耗が早くなるの」
通常は一度攻撃に使うと耐久値が50%の確率で1減るんだけど、ゾンビ相手だと確定で5も減るのだ。普通のダンジョンでも《砥石》系のアイテムがないと通常攻撃を振りたくないのだから、その砥石の入手も安定しないここでは言うまでもない。
だから基本的には一度たりとも近接で殴らないように立ち回る。そのための手段はいくつかあるけど、せっかく拾ったから今回はこれでいこうか。
「まだ有効打がないので、しばらくはゾンビは逃げます」
『おお、壁の中に入った』
「ほとんどの敵は地形を無視できないから、これでいくらでも逃げられるんだ。ただ1ターンごとに1ダメージを受けるからご利用は計画的に」
〈出たな三種の神器〉
〈ズルいよなこれ〉
〈このリターンに数ダメージはタダみたいなもんなのよ〉
〈もし無限に薬草があったらほぼ無敵だもんな〉
さっき作った壁抜けの首飾りの効果だ。装備している間、ダメージと引き換えに壁の中を好きなだけ移動できるようになる。ただ減ったHPは普通の空間で5ターン過ごせば1回復するから、見かけほどは重くない。
もうひとつ凄い点として、壁の中から外へは一方的に攻撃できる。このおかげでほぼあらゆる敵に対して一方的にタコ殴りにできてしまうのだ。今回のゾンビは理由が理由だからやらないけど。……ちなみに壁の中で首飾りを外したら即死するから、同じ操作でワープする作品との混同には注意。
コメント欄で名前が出た三種の神器というのは、この壁抜けの首飾りに加えて《転移の首飾り》と《魔吸いの剣》の三つを指す俗語だ。この宙渡りの回廊で飛び抜けて優秀なアイテムとして界隈では有名になっている。
実際のところ壁抜けの首飾りは三種の神器の中では三番手だけど、それでも他のアイテムとは比較にならない優秀さを誇る。ここからの引きが悪くなければ、充分このテイクで踏破を目指せるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます