第4話 次元の裂け目
「これって本当にヤバいよね…?」
桜は焦った表情で目の前の異常な光景を見つめていた。学校の裏庭に突如として現れた、奇妙な光る裂け目――まるで空間が切り裂かれたようなその姿に、桜は言葉を失っていた。
事の発端は、またしてもモグの食欲だった。
「もう、モグ!学校のプリントとか食べちゃダメだって言ったでしょ!」
今日もまた、桜の持っていた重要な課題がモグに飲み込まれた。桜は嘆きながら、その後始末に追われていたが、その時だった。モグがふと、お腹を鳴らしながらピョンと飛び上がり、空中に向かってパクッと口を開けたのだ。
「何してるの…?」
次の瞬間、モグの目の前に小さな光が現れ、それがどんどん広がっていくと、まるで何かが吸い込まれるような音が響いた。
「え、これって…!?」
桜が驚きの声を上げると、その光の裂け目はまるで吸引力を持つように、周囲の小石や落ち葉を吸い込み始めた。しかも、どんどん大きくなっていく。それはまさに異次元と繋がっているかのようだった。
「ちょっと待ってよ!こんなことになるなんて聞いてない!」
桜は裂け目に近づきすぎないようにしながら、モグを抱きかかえた。モグは何事もなかったかのようにケロッとしているが、桜にとっては大問題だ。このままでは何が起こるかわからない。
「どうしよう…。誰かに助けを求める?いや、でもこんなの誰に言ったって信じてもらえないし…」
桜はパニック寸前になりながら、どうにかこの裂け目を閉じる方法を考え始めた。しかし、モグの能力や異次元のことについて、桜はほとんど何も知らない。もしかしたら、モグ自身もよくわかっていないのかもしれない。
「ねえ、モグ。この裂け目、どうにかして閉じられないの?」
桜が尋ねると、モグは少し考えるように首を傾げたが、すぐに軽くピョンと跳ね、裂け目に向かって手を伸ばした。すると、驚くことに裂け目が少しだけ縮んだように見えた。
「えっ!?できるの!?」
桜は思わず歓声を上げた。しかし、次の瞬間、モグがふらふらと倒れこみそうになり、桜は慌てて支えた。どうやら、裂け目を閉じるにはモグにとっても大変なエネルギーを使うらしい。
「無理しないで…でも、このまま放っておけないよね。」
桜はしばらくの間、モグと裂け目を交互に見つめながら思案していた。そして、ついに一つのアイデアを思いついた。
「もしかして、異次元の食べ物が足りないからこんなことになってるのかな?」
モグは普通の食べ物だけでは満足しない。もしかしたら、異次元からのエネルギーを必要としているのかもしれない。裂け目を閉じるには、モグがしっかりと「満腹」になる必要があるのではないかと考えた桜は、裂け目の周りに散らばった小さな異次元の欠片をモグに差し出した。
「これ、食べてみて!」
モグは少し戸惑ったようだったが、桜の差し出す異次元の欠片をパクリと食べた。すると、モグは急に元気を取り戻し、再び裂け目に向かって手を伸ばした。そして、裂け目はゆっくりと、確実に小さくなっていった。
「やった!これで閉じられる!」
桜はホッと息をついた。モグは無事に裂け目を閉じ、異次元の影響を取り除いたようだ。とはいえ、いつまたこんなことが起こるかわからない。桜はまだまだ気を抜けない。
「でも、君が元気でよかったよ。次は、もう少し大人しくしてくれると助かるんだけどな。」
桜は笑いながらモグを撫でたが、モグはまだどこか物足りなさそうな顔をしていた。異次元の力は封じたものの、彼の食欲はまだまだ健在のようだ。
「これからも、大変そうだなぁ…」
桜はため息をつきながらも、モグとの不思議な日々がこれからも続いていくことを覚悟するのだった。
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