第十五話 一歩へ

 この質問は我ながら的を得る質問だと思う。



 しかし、解答は呆気ないものだった。



 「いや、基本的に他人に呪いをかけられるなんてことないよ?」




 ん、ええぇ!いや確かにメリットなんて無いが。


 本当になにもない、のか、?




 「だからキミのようなケースは珍しい。明らかに何か裏で絡んでるだろうね。」



 「じゃあ、なんで僕の周りでこんなに被呪者が多いんですか?」



 すると、東雲さんの表情が変わった。




 「あまり詳しくは言わない──あえて言うなら呪いを自分にかけてまで、能力を欲する人もいるということだ。」




 「っ────!」





 そこから何を話したのかはあんまりよく覚えていない。多分他愛のない話だったと思うが。




 それを聞いて以降、──僕はつい前まではちゃんとした人間だったのだ、と思い知った気がした。




 自ら、そんな地獄のような、大切な人を傷つけるかもしれない呪いなんて誰がかかるもんか、と思っていた自分がいた。




 でもそれは違った。




 それよりも、やらなくちゃいけないことがあって、自分はもうどうでもよくて、それで自分に呪いをかける人もいるんだって、そう知った。








 東雲さんの元住まいであったアパートを貸してくれる、とのことで、とりあえず今日の寝床はシオンの応接間で寝ることにした。




 しかし、寝るなんて、悠長なことはできなかった。




 「僕が──人を殺す、か」


 できるのだろうか、そんなこと。



 いくら死んでもいい犯罪者だからって、人であることに間違いはないわけで。



 数えたところ、僕に残された時間はあと一週間。それまでに誰かを殺さなくては自分が死ぬことになる。



 やらなきゃ、死ぬ。そのためなら───








 「はぁーい!グッドモーニングみんなー!朝礼はっじめるよー!」


 東雲さんはずっとハイテンションだな。でも今の僕には明るい人がいてくれたほうが、すごく気持ちが楽になる。



 しかしまあ──寝不足だ。




 「あ、天羽さんおはようございますっ」




 「朝からうっさい。ったく──」


 僕、そんなに嫌われることしただろうか?


 いや、まあ、いつか仲良くなれたらいいな!


 なれる───よね? めっちゃ睨んでるけど。 

「今日はひよりちゃんはお仕事なので、荒木くんはシオンの掃除と能力訓練かなっ!」


 「はいっ!了解です!」


 「んじゃ!ボクは三日ほど帰らないから!よろしくねー!」


 三日も!?やはり、強いから忙しい方なんだろうな。

 いや──アレで弱い方だったら僕は生きていけない自信しかないからな…


 「あのっ、能力訓練は一人で─?」



 「んなわけないでしょー?ちゃんとスペシャルゲスト呼んでますっ!」




 すると、それを聞いた、天羽さんは目の色を変えて飛びつく。



 「まっ、まさか久慈くじ先輩がっ!?」




 「そのとーり!」




 「私、今日の予定休むわ。先輩に会う!いいよね、悠さん!?」




 「だーめ!ちゃんと行きな!」


 


 それを聞き、天羽さんはえぇ〜、といじける。




 そんなに天羽さんがファンになる人、と少しその久慈先輩という人に期待を膨らませる。




 「ま!荒木くんには期待してるよ。キミには何か強いものを感じるからね。」




 こんな強いひとに期待されてるんだ。応えない訳にもいかないだろう。




 「はいっ!頑張ります!」

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