第十四話 一つの疑念

 「悠さん、本当にいいの?」


 あの会話の後、歩きながらそう聞く天羽さん。


 「んー?なにが?」



 「あいつにここを任せて、です。正直あいつ、子供に好かれるような性格じゃ──コミュ力ないし。」


 「んーそうかもね。でも今はとにかく人手だ。ひよりちゃん、ボク明日ぐらいからしばらく空けるから、よろしくね。」


 「どうしたんですか?」


 「いや、今、五区とその周辺が荒れててね。その仲裁やらなんやらをしなくちゃいけないんだ。」



 「何か、あったんですか?」



 そうして、数秒ほどの間があったあと、なんとも言いにくそうな顔で話を続けた。


 「まあちょっとね…ひよりちゃんも気を付けてね?あと、あの新人クンが殺されないよーにね。」



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 ま、まずい。正直今までで一番大変な事態になっているかもしれない。


 「あぁぁー!ちょっ、僕の髪の毛引っ張らないでー!?」


 この子供たち元気すぎる!体力が持たないっ!


 「いたっ!誰だー!今僕のこと蹴ったのー!?」


 と、言っても一切聞く耳を持たずだ。どうやら僕は完全に遊び道具と化してしまったらしい。



 ほら!僕の困っている姿を見てめちゃくちゃ笑ってるし──!



 「あはー!初日からやられてるねぇ。」


 「見てないで助けてくださいよ!東雲さんっ!」


 「いや!ここを乗り越えてこそだよー!がんば!」


 この人、本当にいい人なのかー!?僕を助けてくれた恩人だが。


 だが、やはり子ども食堂をやっているくらいだ。優しいのは間違いないだろう。


 しかし──これは別だろう!?





 夕方になり子どもたちは帰り、僕たちは裏で休んでいた。


 「お疲れ様ー!どうどうっ?子供たちと遊んでみてっ!」


 「疲れ…ましたね…」


 「まー!慣れるよ!さ、コーヒー淹れたから飲みなよ」


 「ありがとうございますっ…!───あれ、天羽さんは?」



 「あぁ、この時間は彼女は墓参りだね。──彼女、両親とも死んじゃったから。」


 そうだったのか…。僕と少し重ねてしまった。


 「実は、僕も両親がどっちも他界してて。──天羽さんはなんでここへ来たんですか?」


  僕と同じような境遇でここへ来たのだろうか、と少し気になったので聞いてみた。


 「んー、彼女もね、キミとおんなじ理由だよ。彼女の両親は呪いに蝕まれて、SESに殺された。その呪いをかけたやつを殺すために、彼女はここへ来たんだ。」


 「そう…だったんですね。───僕はそれとはちょっと違くって、姉が何者かに呪いにかけられたんでしょうね。それで家に帰ったら両親が殺されている状態でした。姉は特に親思いの優しい人でしたから──呪いのせいで殺したとしか思えなくて。」


 そこで、僕は一つの疑問にたどり着いた。


 「あのっ!東雲さん!聞きたいことがあるんですが!」


 「ん、なにっ?」


 「──なんで、何も関係のない達に人に呪いをかける人がいるんですか?」

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