第十三話 これが僕の選択
それを言われたとき、僕の頭は真っ白になった。
僕が、人を殺す。なんて、考えたこともなかったし、きっとこれからも考えることなんてないだろうと思っていた。
しかし、この人が嘘をつく、とはどうしても思えなかった。それが一層現実を叩きつけるようで、僕を追い込んでいく。
「そこで、ボクはキミに一つ提案があるんだ。」
「ボクの下で働いてみないか?この”シオン”で。」
「───なぜですか、?」
僕は、自殺をしようと考えていた。僕なんか生きていても仕方がない。
死んだほうが、皆も幸せで、僕も幸せになれる気がして。
「ボクの下なら、死罪当然の犯罪者の情報が入ってくる。それをキミが殺せばいい。それなら罪悪感も少しは和らぐはずだ。」
「僕は…もう死ぬ気で…」
それ以上言おうとしたところで、遮らえた。
「ボクは君に生きていてほしい。君が死んだら、悲しむ人もいるはずだ。」
「──でもっ…!───僕には…人を殺せない、!」
「それは違う。あれは人じゃない、人の皮を被ったナニカだ。死ぬことがこの世の利益となるようなゴミだ。」
淡々と言う姿を見て、僕は何も言えなかった。
何が正解なのか、何をこれからしたらいいのか。全て誰かに委ねてしまいたかった。
「きっと、キミには今、未来というものが見えていないだろう。でも、それでも進まなくちゃ分からない。あのときにああしてればよかったなんて、それは結果論だ。あの時の行動を正解にする為に今を生きよう。」
「──キミはどうしたい?ボクは、今キミを助けることが正解だと思うんだ。そしてボクがキミを今助け、いつかキミが誰かを救う。それでいいんじゃない?」
もし、僕が助けた誰かが、僕のような人を助けるなら、それはきっと、『正しい選択』をしたって胸を張れるんだろう。
今、死んだら──誰も救えない。むしろ、だいちゃんを悲しませることになるだろう。
だったら───?
「──僕の姉は、被呪者です。それで、両親を殺してそれっきり、どこかへ行ってしまいました。」
「ここなら、姉に呪いをかけたやつに解呪させて、殺すこともできますか、?」
この問いに、悠さんは答えた。
「ここならできるはずだ。───やってくれるかい?」
「自分のできることは何でもやります。だから───今は生きていたい。必ず、姉を呪ったやつに呪いを解かせます。そして、僕は──僕が僕でいられるように。」
これが、今の答え。今後なんて考えない。
今はただ、僕が僕でいられるように。生きて、だいちゃんに、姉に、僕なんかの存在を認めてもらえるように。
「うん──分かったよ。じゃー!キミはこれからここのスタッフだ!ボクの名前は
「天羽…
これから、何が起こるかは分からない。でも、もし、願っていいなら───
「
この選択が一番の正解だったって、いつか思えたらいいな。
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