第十二話 命の灯火はまだ燃えている

 僕はひよりちゃん?に連れ去られ、目的地であった子ども食堂シオンへとやってきた。


 「ここよ。早く入って。」



 「お邪魔しますっ…!」



 そこには多くの子ども達がご飯を食べていた。


その真ん中にいたのがさっきの男の人だった。いかにも優男オーラがすごい。


 「おっ、きたきた!ひよりちゃんお疲れ様ー!君もこれまで疲れたよね、二人とも奥に行ってて!」


 「ありがとうございますっ…!」


 「さんきゅー、悠さん。」


 と、行こうとする僕たちに子ども達がわぁっ、とくる。



 「お兄ちゃん、新しい遊び相手ー!?」


 「あっ、えっと…どーだろ、?」


 実際、助けてもらいたくてここに来たわけだが、ここに住む…ことになるのだろうか。


 「ひよりちゃんー、このお兄ちゃん新しい遊び相手っ?」



 「んー?んーと、そのための相談を今からしにいくのっ、だからあなたたち皆で仲良く遊んでてねっ?奥、来ちゃだめよ??」


 はーい、と元気よく言いまた駆け出していく。というか、やはりここに住むかどうかの相談を今からするのか。


 「はい、これ着けて。」


 「これは…?」


 「それも知らないの…?はあ───それは制御器リミッター腕に着けると力が制御されるわ。能力も使えなくなるけど、呪いも代わりに発動しなくなるから。」




 「な、なるほど…」 




 そして、腕に着けてサングラスを外してみる。そうすると全然殺意も湧かず、清々しい気分だった。


 「すっ、すごい…!」


 「おっ!着けてみさせたんだねー!どうどうっ?ボクみてもなんともない?」


 悠さん、と呼ばれていた人が入ってきた。


 しかし、この人は腕を見ても、どこにも制御器リミッターを着けてはいなかった。




 「全然大丈夫ですっ、!ほんとに…ありがとうございます!」




 「ん、それは構わないよ。基本的な処置をしただけだ。あと、傷の手当てだね。」


 そう言うと、僕の近くに寄り、ほいっ、と言った。


 すると、たちまち、傷は治っていった。いや、たちまちと言うより、瞬時に、だ。


 「えぇっ!すごい、!」


 「ふふーん、だろ!───さてキミに聞きたいことがあるんだ。」



 「なんでしょう───?」


 「まず、どうやってその呪いを受けた?」



 「えっと──知らない男の人に襲われて──」



 「なるほどね、その男の所在は?」



 そこで、僕は今日の朝見たニュースを思い出した。


 「あっ、ニュースで自殺したって…!」


 「なにっ…!?」


 と、話を聞いていたひよりちゃん?が驚いてきた。


 そして、男の人は神妙な顔をして続ける。


 「それは──まずいね。なおさらキミはここで働いてもらわなくちゃいけないかもね。」


 「えっと…それはどういう…?」


 「呪いを解く方法っていうのは、基本一つしかない。それは呪いをかけたやつに『』と言わせる、殆どのケースがそれだ。」


 「つまり、僕にはそれがもうできない…?」


 「そういうことだ。だがそれしかない、というだけだ。まだ方法はある。」


 「いったい、どんな方法がっ…?」


 「ん…?あ、いやボクは知らない。ただね、呪いをかけられるんだ、必ず解く方法っていうのはまだあるはずだ。」



 望みが全くない、というわけではないらしいが、殆ど無いようなものだろう。



 この制御器があるおかげで生きてはいけるだろうが、SESにはこれから追いかけられながら生きていくことになるだろう。

 


 そんな状態で──また一般人と同じ生き方ができるのだろうか、?

 


 だいちゃんとまた、一緒に話せる日なんて、ほんとにまた来るのだろうか?



 考えようのないほどの不安が僕に襲いかかる。


 「で──今のキミに、受け止めきれるかどうか分からないが、言っておくね、?」


 「っ…!?悠さんっ!?」


 何を言うか、悟ったひよりちゃん?は止めにかかる。



 「ひよりちゃん、これは仕方ない。いつかは伝えなきゃいけない。」


 「なん…ですか…?」


 僕は、今出せる声を絞り、虫の死にかけの様な声で聞く。




 「制御器リミッターってのは結局、その力を縛っているだけなんだ。だが、本当にちゃんと縛れるならSESは被呪者を執行対象者にはしない。呪いはね、その欲・を発散してあげないと、その力が『暴走』をしてしまってね、死に至る。」



 「つまり…?」



 いや、何となく、この時点で察していた。でもまだ、認めたくなかった。



 しかし、現実は残酷で──



 「───十日だ。十日に一回、人を殺さなきゃ、キミは死ぬことになる。」

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