第十一話 接触 其の三

何なんだ。これは。




 入隊して三年。俺は過去最年少の一等執行官となった。


 だが、この圧倒的な力に自分は感動さえ覚えていた。




 (素晴らしい…!凄い…!こいつと、!)


 「ふむ…キミ、制御器リミッター着けてないね。ほんとにひよりちゃんの言ってた通りだ。ダダ漏れ。これはいろいろ訳ありかな?」




 何だこれっ、体が動かない!この人の能力か…!?悪い人では───なさそうだが。




 「さて、佐々木一等だよね?有名だから知ってるよ。ここは僕の顔に免じてこの子を逃してはくれないだろうか。まだ、君には未来があるだろう。そんな良い未来をここで失うには惜しいんだ。」



 この人は、僕が悪者ではないと知っているのか?もし僕が極悪人だったらこんな行動はしないだろう。



 「と、言っても君に決める権利は与えないんだけどね。」






 そう言って、指を「パチッ!」と鳴らすと、急に世界は動き出した。




「今だよ、ひよりちゃん!」



「分かってる。」


「させるかっ!!」

 SESの人が僕に一撃を与えようと動くが、それを時を止めた人が止める。



 そして、僕は瞬時に何者かに担がれその場から移動させられていた。



 その人というのが、あの時、僕を心配してくれた綺麗な黒髪の女の人だった。



 ───どんどんあの現場から離れていく。




 「あっ、あの!なんで僕を助けてくれたんですかっ…!?」


 僕はどうしても気になり、聞いてみる。



 「あんた、あの時呪いがダダ漏れだったのよ。このままじゃいけないと思ってね。私があの時止めた男の人に言ったのよ。二日も尻尾出さないのはびっくりしたけどね。」



 そんなに呪いが漏れていたのか、というか分かるものなんだな。それであの執行官も───?



 「あ、ありがとうございますっ!ほんとに……!」



 すると、嫌悪するような声で言った。いや実際嫌悪していたんだろう。



 「礼を言う暇あるならもっと自分から動けば?情けないガキ。」


 「あ…すみません。」


 「そのいちいち、って言うのやめて?腹が立つから。どうせあんたみたいな奴は誰かの影で生きてきたんでしょうね。」



 なにも言い返せなかった。全くその通りだった。常にだいちゃんとばかり喋ってきて、何も──


#####################################



「あ〜…くそ、痛ぇ…」



 やはり一等執行官になったからってと並べるかといったら無理らしい。


 「ちっ、しかもあいつなーにが『もっと強くなったら相手してやる』だ。執行される側だって分かってんのか…?くそ。」



 3発ほど殴られてまんまと逃げて帰ってきた。なんて言ったらSESの笑いものだろう。



 「東雲悠しののめゆう、特別執行対象者、執行する際には特等執行官二人、もしくは一等執行官七人を推奨する。か。」



 「そんなん言われたら───なおさら単独執行、やりたくなっちゃうよねぇ♡」


 


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