第八話 追懐:荒木結翔 其の四

「悪かった。」




 あの後、公園に着いて早々に言われたことだった。




 「な、なんで、二宮くんが謝るのさっ…!」




 「俺の友達が、お前を傷づけちまった。」




 それに関して、僕は何も言えなかった。二宮くんが謝るべきものなのか。弱い僕が謝ればいいのか。返事に、すごく迷った。




 「もう、俺は荒木に関わらないようにするよ。これ以上、お前を巻き込めねぇ。他にもキヨちゃんみてなぇな思いを抱いてる奴は多分、いる。だから───」 




 二宮くんの言いたいことは、全て分かった。でも、それは──




 「それはいやだっ…!」




 二宮くんは少しハッとしたような顔をする。


 「お、俺も嫌だよ!でもっ、そうするしか…!」




 「──っ、ぁぁ…」




 きっと、この時の僕には何かよい手立てを探す脳なんてなかったんだろう。


 本当に何も──言えなかった。ただ、別れたくない一心で。




「分かった。中学校だ。そっからまた、やり直そう。」




「…え、?」




「俺とお前で、一緒に付属中学校に行くんだよ!中学受験だ。」 




「受かるかは賭けだ。でも、それしかねぇんじゃねえか?お前もあいつらと離れられる、唯一の方法。」




「僕はそれでいい…!でもっ、二宮くんは、いいのっ…?そんな…友達を見捨てるような。」




 「友達を傷つけるような奴は、もう友達じゃねえよ。」




 あぁ、この人は…本当に優しい。僕の中の、太陽だ。それはきっと、今も揺るがない。


 「ありがとう…ありがとうっ…!二宮くんっ…!」




 「へへっ、てか、いーからお前は苗字呼びやめろなー!」


 夕陽に照らされながらそう言う二宮くんと、今こうして並んで話せていることを本当に奇跡だと思う。




 「じゃあ──だいちゃん。」




 「…おう…!いいじゃねぇか!!」




 その日はいつもよりも、沢山話した。そして、沢山笑った日だった。










 そして、小学校六年の二月。合格発表日。




 「1586────あった。」




 僕はめでたく付属中学校に入学することができた。


そしてすぐにだいちゃんに電話をかけた。


 「だいちゃん!どうだったっ!?」




 「もちろん受かってたぜ。荒木はっ?」




 「受かってたよ…よかった…ほんと。」




 「あぁ、これからもよろしくだな!」




 電話越しでも伝わってくる力強い声だった。




 「うんっ…!よろしくっ!」








 そして中学をだいちゃんと過ごし、無事また同じ高校へ入学することができた。


 中学でも僕は相変わらずの性格だったが、だいちゃんがいてくれたおかげで、寂しい思いはしなかった。




 だが、僕はだいちゃんに縋りすぎていた。一人で行動なんてあまりできない。




 だから、きっとこれは神様が与えた試練なんじゃないかと思う。




 この呪いに打ち勝ち、自分の得たいものを得る。






 それが果たせた時、また君に会いに行くよ。

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