第9話不可避の選択
小屋を出た俺は、広がる草原の中へ足を踏み入れた。爽やかな風が頬を撫で、心に新たな希望が芽生えていくのを感じていた。過去を受け入れた今、俺の内なる力が明確になり、これからの旅に対する自信が高まっていた。
しかし、道は長く、想像以上に険しいことを知っていた。歩くにつれ、周囲に立ち込める霧が濃くなる。徐々に視界が遮られ、自信は少しずつ不安に変わっていく。果たして、次の試練はどのようなもので、俺の選択はどのように試されるのだろうか。
しばらく進むと、ふと道の先に二つの分かれ道が現れた。左の道は暗く、木々がうっそうと茂り、不気味な気配を漂わせている。一方、右の道は明るく、花が咲き誇り、小鳥のさえずりが響いていた。
「どちらの道を選ぶべきか…。」俺は立ち止まり、心の中で葛藤した。左の道は試練を提供するかもしれないが、危険も伴う。一方で、右の道は安らぎを感じさせたが、本当の力を試されることはないのではないかという不安がよぎった。
突然、昨夜の老女の言葉が頭をよぎる。「お前が選ぶ力を試す者たちが、これからお前を待っている。お前の選択が、真の力を引き出す鍵となる。」
確かに、この選択が俺の先に進む道を大きく変える。しかし、どうするべきか…。「俺は、自分の力を信じて進むべきだ!」勇気を振り絞り、右の道へ足を踏み出す決意を固めた。
しばらく歩くと、道は美しい花畑へと繋がっていた。色とりどりの花が咲き誇り、その香りに包まれながら、心が少しだけ和む。だが、次の瞬間、視界がぼやけ、周囲が歪んで見えた。何かが起こる予感に胸が高鳴る。
「この道は安全かと思ったが、何かしら試練が待っているのか…?」警戒心を持ちながら進んだ。
すると、突然、草原の中に人影が現れた。声が響く。「ダリウス、待っていたよ。」
驚いて振り向くと、そこには村の友人であり、昔の仲間であるリサが立っていた。彼女の顔は怒りで歪んでいる。「どうしてお前はこんなところに来た?もうお前は孤児ではない、村を捨てて出て行ったのはお前自身だろう!」
「リサ…!」胸が苦しくなった。過去の俺には、避けたい記憶が詰まっている。友人たちとの別れ、孤独感、そして取り残された思い…。彼女の言葉は、まるで過去の囚われから解き放つ鍵のようにも思えた。
「お前が選んだ道は間違いだ。戻れ、ダリウス。」リサの声が響き、俺の心を揺さぶる。
「違う!俺は自分の運命を選びたい。今の俺を理解してくれ!」力強く反論したが、その言葉は無力感を伴っていた。
すると、リサは一歩ずつ近づき、俺を見つめた。「お前は本当の自分を受け入れたのか?それなら、選択する力を試すがいい。今、お前の前に立っているのは過去そのものだ。」彼女が指さす先には、俺の過去が映し出された幻影が立ちふさがっていた。
深呼吸し、心を整える。確かに、選択は常に目の前にある。俺は過去を受け入れると決めた。その力を試されるのなら、逃げずに立ち向かおう。「俺は、お前も過去も受け入れる!」叫ぶように声を上げた。
その瞬間、周囲が激しい光に包まれ、幻影たちが俺を取り囲む。リサが微笑み、俺に道を指し示す。選択を迫られた俺は、恐れずに進む決意を固めた。
「さあ、進もう…!」俺の心に宿る力が全身を駆け巡り、未来へ踏み出す準備が整った。運命は待っている。その先にある真実に向かって、理想の自分を見つけるために、進み続けるのだ。
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