第8話目覚める力
霧に包まれた森から脱出し、新たな道を歩き始めた。心臓は高鳴り、期待と緊張が交錯する。その道の先には、明るい光が差し込み、温かな風が吹いているように感じた。過去を受け入れることで、俺の内なる力が目覚めたのだ。これからの試練が、どのようにその力を試すのか、考えただけで胸が熱くなった。
「俺には、もう迷いはない。」自らに言い聞かせつつ、一歩を踏み出す。
道が広がり、周囲の風景が変わる。美しい草原が広がり、色とりどりの花々が咲き誇るその様子は、まるで夢の中の景色のようだった。これまでの困難な道のりを経て、今や心は清々しさに包まれていた。俺は新たな試練に向かって進む準備ができている。
歩き進む中、ふと目の前に一軒の小さな小屋が現れた。朽ちかけた木の扉が静かに開いていて、何かが中に待っているように感じた。気になり、戸口に近づくと、中からふわりとした香りが漂ってきた。それは甘くて穏やかな、花の香りだ。
「こんにちは、旅人。」突然、柔らかい声が響いた。驚いて振り返ると、小屋の中から年老いた女性が姿を現した。彼女の目は優しさと智慧にあふれていて、心の奥深くまで見透かされているような感覚に襲われる。
「お前がダリウスであろう?村の外れから旅をしてきた孤児の子。」彼女の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。どうして彼女が俺の名前を知っているのか。
「何故、私のことを…?」声が震えた。
「この森には、多くの者が通り過ぎ、たくさんの思いが集まる。お前の思いや決意は、ここにいる者たちに届いているのだ。」彼女は微笑み、その笑顔には心の底からの優しさが感じられた。
「お前が選択する力を試す者たちが、これからお前を待っている。お前の選択が、真の力を引き出す鍵となる。」彼女の言葉は、まるで祝福のように響く。
「真の力を…?」その言葉に胸が高鳴った。どのような力であれ、俺はそれを手に入れたかった。
「お前の旅はまだ始まったばかり。これから進む道には、様々な試練が待っているだろう。それらを乗り越えることで、本当の自分を見つけ、真の力を手にすることができる。」彼女は小屋の奥へと手を差し伸べ、「さあ、中に入って、次の試練を迎え入れるのだ。」と言った。
恐る恐る小屋の中に足を踏み入れると、その中には何もないと思ったが、そこには一面の鏡が設置された壁があり、俺の姿が映し出されていた。しかし、映っているのはただの俺ではなかった。そこには、より強く、より自信に満ちた自分が映し出されているように見えた。
「これが、俺の本当の姿…?」信じられずに自分を見つめたが、その瞬間、鏡が波打ち始め、まるで別の世界へ引き込まれるようだった。
目の前に現れたのは、かつての自分。その後ろには、村人たちからの冷たい視線が渦巻いている。続いて、様々な過去の出来事が俺の前に現れた。それらは恐れと孤独、悲しみを抱えていたあの日の俺そのものだった。
「これが俺の力に封じ込められていたものか…。」そこで俺は気づく。過去の自分が持っていた力は、決して消え去ったものではなく、今も俺の中に眠っているのだ。その過去を受け入れてこそ、力が目覚めるのだ。
「俺はその全てを受け入れる!」力強く叫び、目の前の幻影に向かって突き進んだ。その瞬間、強い光が全身を包み込み、俺の中に流れ込んでくる感覚があった。
ふと、周囲が静まると、俺の目の前には老女が微笑みながら立っていた。「素晴らしい選択だ、ダリウス。これが真の力を受け入れた者の眼差しだ。過去を掲げる者こそ、未来を変える力を持つのだ。」そして彼女は、俺に新たな道を示した。
小屋から出た後、俺は新たな決意を胸に進み出す。周りには、光が広がる道が続いている。その先には、さらなる試練が待ち受けているに違いない。だが、俺はもう一人ではない。過去を受け入れることで、真の力を手に入れ、未来へと踏み出す準備ができている。
「よし、行こう!」自分を奮い立たせるように叫び、次の試練に向けて進んでいく。運命の扉が再び開かれ、真実へと至る旅が続いているのだ。
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