第7話運命の選択



霧の森を抜け、新たな道へと足を進めていくと、空気は徐々に変わっていく。心の奥底に宿った力が、未知の試練へと導く感覚があった。新たに開かれた道の先には、光が溢れる世界が広がっているように思えた。


「次の試練は、どんなものだろう?」心の中で自問しながら、一歩踏み出す。周りの風景が色鮮やかに変わり、まるで夢の中のようだった。道の両脇には美しい花々が咲き誇り、柔らかな陽の光が木漏れ日となって舞い降りる。これが真の力を得るための試練なのだろうか?少し安堵感が湧いてくる。


すると、ふと立ち止まった。視界の端に、一人の女性が見えた。その姿は、村で一番厳しい態度を取っていたとなりの家の娘、リサだった。彼女は心の奥深くに根付いた悲しみを抱えているようだった。あの頃の俺の記憶の中で、彼女の目はいつも冷たく、時には俺を嘲笑うような目つきをしていた。


「リサ…どうしてここに?」驚きの声が漏れる。リサはゆっくりとこっちを向き、微笑みを浮かべているように見えた。


「あなたが来ること、ずっと待っていたの。」彼女の言葉に、心が躍る。しかし、次の瞬間、その表情は変わり、真剣な面持ちになる。「あなたが力を求めるなら、今までの過去を抜け出さなければならない。」


「過去…?」その言葉が、さらに俺の心を揺さぶる。リサは俺の心の隅々に潜む不安や後悔を知っているのかもしれない。


「そう、あなたの過去。あなたは孤児で、村人たちから除け者にされ、何もできないと感じ続けてきた。でも、その悲しみを背負っている限り、力は手に入らないわ。」彼女の言葉は、まるで俺の内部に深く浸透していく。


「俺は復讐を誓った!村人たち見返してやるんだ!」言葉が怒りを湛え、心の炎が再び燃え上がる。リサは首を振り、その感情を静めるように促す。


「復讐ではなく、自分を解放することが大事なのよ。あなた自身が力を受け入れなければ、力は宿らない。そして過去を乗り越えなければ、真の力を発揮することはできないわ。」


リサの目を見ると、その中には悲しみと同時に希望が宿っているのを感じた。彼女はもしかしたら、俺と同じように村での孤独を経験してきたのかもしれない。そして、自らの過去と対峙しようとしているのだ。


「俺は、力を手に入れたい。でも…どうすればいいのか分からない。」心の気持ちを正直に伝えると、リサは微笑み、柔らかな声で続ける。


「あなたの力は、選択によって決まる。今、二つの道が目の前に開かれている。一つは過去を捨てること、もう一つは、過去を受け入れ、その上に立ち上がること。さあ、どちらを選ぶの?」


俺は彼女の言葉を反芻する。過去を捨てることは、今の自分を無にすることであり、受け入れることは、痛みや悲しみを抱きしめること。どちらを選んでも、俺の心は揺らいでいる。


思わず心の中で考える。「俺は、過去を忘れることができない。だから、受け入れる道を選ぼう。」その思いが湧き上がってくる。


「俺は過去を受け入れ、そこから立ち上がる。力を手に入れるために。」その言葉は力強く響いた。


リサの微笑みが広がり、周りの風景が少し明るくなる。彼女の目が優しさを宿し、まるで俺の意思を尊重してくれているかのようだった。「素晴らしい選択よ、ダリウス。これが、あなたの真の力の第一歩ね。」


その瞬間、リサの姿がゆっくりと消え始め、周囲が再び神秘的な霧に包まれていく。そして、遠くから光の川のようなものが現れ、そこから聞こえる声があった。「過去を受け入れた者よ、お前には新たな力が宿る。」


その言葉が響く瞬間、俺の心の奥で何かが覚醒した。過去の悲しみや後悔が、俺の中で一つにまとまっていくのを感じる。それが俺自身を強くし、新たな道を切り開いていく力となった。


「これから進むべき道を、俺自身の力で切り開く。それが、俺の運命だ。」強い決意を持って、再び一歩を踏み出す。


運命の扉は、今再び開かれようとしている。真実を受け入れ、力を手に入れる、新たな旅路に向けて進む。これが俺の選択だ。そして、新たな運命を迎える準備ができている。

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