第6話反響する運命
森の奥深くへ進むと、空気は静けさに包まれ、驚くほどの静寂が腰に重くのしかかる。木々はさらに密生し、光はほとんど届かない。この世界は、まるで時間が止まっているかのようだった。だが、心の中に宿った力は、今までよりも強く感じられた。過去を受け入れたことで、俺は新たな一歩を踏み出した。それはまるで、運命が俺を導いているかのようだった。
歩みを進めるにつれ、急に耳元でささやく声が聞こえた。「進む者に試練を与えよう。」その声ははっきりとしたもので、どこからともなく響いてくる。胸の奥がざわつき、俺は瞬時に身体が緊張した。
「誰だ?」俺は問いかけたが、返事はなかった。さらに進むと、道の先には岩の崖が現れ、そこに目を引く光景が広がっていた。崖の上には、古代の建物のような巨大な遺跡がそびえ立っている。石造りの壁は苔に覆われ、神秘的なオーラを放っていた。
近づくにつれ、恐怖と畏敬が交錯する感情が胸を満たす。俺はこの場所が重要だと直感した。失われた知恵がここに眠っているのかもしれないという気持ちが、一層俺を引き寄せた。
遺跡の入口へ踏み込むと、薄暗い中で微かな光がどこからともなく漏れ出している。中に進むと、天井の高い大広間にたどり着く。その中央には、祭壇のような石の台座があり、そこには光を放つクリスタルが安置されていた。
「これが…真実のクリスタルか…」俺は息を呑む。伝説に語られる力の源だとすれば、このクリスタルが持つ力は計り知れない。
手を伸ばし、クリスタルに触れようとすると、空気が震え、耳元で再びあの声が響いた。「真実を知る者は、力を試される。」その瞬間、周囲が暗闇に覆われ、俺の視野が急に変わった。
目の前には、数人の影が現れた。それは俺の過去の記憶に登場する人々だった。笑顔を浮かべている者、涙を流している者、憤怒し、俺に向かって指を指す者もいた。彼らの表情から、痛みと後悔、希望と絶望が入り混じっているのが分かった。
「お前が選ばれた者だ。どちらの道を選ぶ?」一人の影が俺に問いかける。彼は、俺がかつて対峙した友人の姿だった。
「選ぶって…何を?」俺は混乱し、声が途切れる。
「力を得るには、何かを失わなければならない。お前は、どれだけの代償を払う覚悟があるのか?」その言葉が、心に鋭く突き刺さる。
俺は深呼吸をし、内なる声に耳を傾けた。真実を求めることは、簡単な道ではない。失うもの、それは愛する人たちとの絆かもしれない。だが、進むことで得られる力が、未来を変える手助けになるなら、その代償は受け入れてみせる。
「俺は、未来を掴むために進む。この道を選ぶ。」言葉に力を込め、目の前の影と向き合う。彼らの表情は一瞬驚き、次第に穏やかに変わっていった。過去を乗り越え、受け入れる準備ができた証だ。
その瞬間、クリスタルから強い光が放たれ、俺を包み込んだ。光の中で、過去の影は消え、俺の内なる力が目覚める感覚があった。そして、遺跡の壁にかかっていた数々の光の文字が浮かび上がり、何かを唱え始める。
「真実を受け入れた者には、真の力が宿る。この力は、善なる道に使う者にのみ与えられる。」その声は響き渡り、俺の中で何かを解き放った。
光が収まり、目の前には新たな道が開かれていた。その道は、未知なる冒険と、さらなる試練へ導くものだと感じた。
「行こう、次の試練へ。」決意を新たにし、俺はその先へと歩み出した。運命の反響は、まだ静まりはしない。俺を待つ運命の試練が、これから待ち受けているのだから。
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