第2話旅の始まり



俺は廃屋を出て、村の境を越える決意を固めた。心の鼓動が高鳴り、期待と不安が入り混じった感情が胸を締め付ける。今までの自分には考えられなかったことだ。俺はただの孤児、村人たちから見下される存在だった。しかし、今は違う。力を得たい、そのために条件を満たさなければならないのだ。


村を離れると、薄曇りの空が少しだけ明るくなった気がした。遠くには山々が連なり、緑の森が広がっている。俺が今まで足を運べなかった世界が、目の前に広がっている。どこからか、鮮やかな鳥のさえずりが聞こえてくる。希望の旋律のように感じた。


「最初の条件は、何なんだろう…?」


俺は魔法書を手にして、ページをめくり始めた。すると、不思議なことに、ページが滑らかな動きを見せる。まるで求めている内容を知っているかのように。やがて、特定の言葉に目が留まった。


「真実を知る者は、力を手にする。」


「真実?」心の中に疑問が広がる。何を知ればいいのか。俺自身の真実、そしてこの村の真実なのか?村人たちは俺を嫌っているが、その理由は俺にはわからない。ただ魔物の子だと決めつけられ、除け者にされ続けた。真実を知ることが、力への第一歩なのかもしれない。


俺は村から遥かに離れた森の奥深くへと足を進めた。森の中は神秘的で、光が木々の隙間から差し込む。静けさが支配する中で、心の中にある炎が消えないことを実感する。「真実」を探し求める旅が始まったのだ。


急な音に振り返ると、小さなリスが木の上からこちらを見下ろしている。彼が何を考えているのかはわからないけれど、俺に対して興味を示しているようだった。「旅は仲間がいると良い」という言葉を思い出す。孤独でいることが恐ろしいだけだ。だが、俺には何もない。仲間の気配はない。この森には、どんな出会いが待っているのだろう?


ふと、みぞれが降り出す。冷たい雨が俺の頬に触れる。気温が下がり背筋が凍る。だが、少しずつこの瞬間に心が引き寄せられる気がした。きっと、この寒さを超えたところに、俺が求めている「真実」が待っているのだろう。


「行こう、ダリウス。」


自らを鼓舞しながら、一歩ずつ進んで行く。その瞬間、何かが俺を包み込んでいくのを感じた。薄曇りの空が徐々に晴れ、光が差し込み始めた。


「何が待っているかわからないけれど、俺にはもう後戻りはできない。」不安と興奮の中で深呼吸する。


運命がどこへ導いてくれるのか、さあ、一歩を踏み出す旅が始まった。真実を見据え、力を手にするために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る